再配達の件数を減らすことができれば二酸化炭素の排出量も減らせるため、同省は環境省と共同で17年度にボックス設置を促進。環境省が5億円の予算を初めて計上し、受取ボックスを設置した物流事業者などに対し補助金を出す。JR東日本は今年5月までに首都圏の駅に100カ所の受取ロッカーを設置する計画で、ヤマトも22年度までに、駅やバスターミナルに5000カ所設置する予定だ。
再配達に対しては、受け取る客に課金させるべきとの声もあるが、発送元と届け先どちらに課金するかなどの課題があり導入のハードルは高い。
将来を見据えた取り組みも進める。自動運転を活用した無人宅配サービス「ロボネコヤマト」の実証実験を、3月からDeNAと共同で実施。自分宛の荷物の配送を知らされた顧客は専用アプリを使い、受け取り場所と日時を指定。配送車が到着すると、荷台のロッカーから荷物を受け取れるサービスを目指しているが、現状の課題をすぐに解決できるわけではない。
物流業界に詳しいイー・ロジットの角井亮一社長は「ネット通販は爆発的な広まりを見せており、JR東日本が宅配受取ロッカーを増設したり、ヤマトが配達料金を上げたりしても『焼け石に水』だ。業界全体で使えるような通知アプリの開発など、業界を挙げた取り組みが不可欠だ」と指摘する。
物販市場全体に占めるネット通販の割合は5%に過ぎないが、今後はさらに伸びていくと考えられる。効率化を進めても限界があり、抜本的な解決は不可能だ。女性の社会進出なども進み、生活形態も消費行動も変化する中、40年以上続いた「便利で非効率な」ビジネスモデル自体をデザインし直す必要性に迫られている。
■特集『さらば生産性後進国 解は効率化の先にある』
【Part 1】人手不足を好機に変える サービス業生産性向上の術
【Part 2】米国に空けられた大きな差 低生産性国ニッポンの惨状
【Part 3】付加価値を生み出すイノベーションの起こし方
【Column】
・効率化だけでは維持できぬ宅配モデル 現場崩壊に抗うヤマト運輸の苦境
・TWG、オロビアンコに学ぶ付加価値の築き方
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