金融政策と米国雇用統計に関心が偏っているマーケット・エコノミスト
マーケット・エコノミストは、株価等(為替、金利なども含む)を予想する目的で景気について語る人々です。彼らの特徴は2つあります。一つは、日米の金融政策と米国雇用統計に(強いて言えば日銀短観を含めて)、関心が偏っていることです。景気の予想屋が広く浅く経済関係の指標等に目配りしているのとは、大きく異なります。それは、彼らの顧客が市場関係者だからです。
市場で利益を稼ぐには、「他の市場参加者が注目している指標をしっかり分析し、予想し、市場の動きを先取りする」ことが必要です。たとえば米国の中央銀行が市場参加者の予想を裏切って利上げをしたら、ドル高になるでしょう。そんな時に、「自分は利上げを予想して、あらかじめドルを買っていたから儲かった。利上げを予想していたマーケット・エコノミストの◯◯さんには感謝している」という投資家がいれば、「次からは自分も◯◯さんの話を聞こう」と思ってもらえるでしょう。従って、マーケット・エコノミストは、必死で金融政策を予想しようとします。
しかし、市場関係者が米国の鉱工業生産や輸出や設備投資などに興味を持っていないため、そうした指標が発表されても株価などが動きません。それならば、マーケット・エコノミストにとって、そうした指標を予想することは無駄なことです。
景気の予想屋から見ると、米国の雇用統計も鉱工業生産も、同じくらい重要な経済指標なのですが、市場関係者が雇用統計しか見ないのは、「他の市場参加者が雇用統計しか見ていないから」なのです。昔、市場関係者に雇用統計が選ばれたのは偶然なのでしょうが、かつて偶然選ばれたために皆が注目するようになり、それゆえに皆が一層注目するようになる、ということで、長い間、注目を集め続けているわけです。