もともとCJ機構は本件に10億円を出資、全株式数の20・6%を所有していたため、今回のバンダイナムコの株式取得にかかった21億円を単純に所有株式数で分ければ、本件のエグジットは約3億2000万円の損失となる。これについてCJ機構に正確な金額を質問したが「株式取得を行うバンダイナムコにおいて開示していない方針と聞いており、弊社もそのルールに従う」と答えは得られなかった。
「もともと投資の見立てが甘く、バンダイナムコが引き取った形」とアニメ業界の関係者は語る。「CJ機構が出資を発表したころにはネットフリックスやアマゾンプライム・ビデオなど、海外企業の営業担当がアニメクリエイターを回り日本アニメに制作段階から出資していることは分かっていた。海外ウケする新作アニメは資金力のある彼らにどんどん持っていかれ、配信事業が行き詰るのは目に見えていた」。
なぜこうも疑問点の多い出資が行われているのか。それは「民業補完の原則が忘れられ、ガバナンスが欠けていることに起因する」(明治大学公共政策大学院の田中秀明教授)という。
なぜか官庁に再就職する元役員
CJ機構設立前の2013年6月11日、参議院経済産業委員会で「CJ機構の常勤役職員に経産省で10年以上勤めた人が入ることはあるのか」という質問がなされた。それに対して茂木敏充経産相(当時)は、「基本的にはない。民間人を中心にやっていく。たまたま、かつて経産省に勤めていた人間をどうしても採りたいことを禁止するものではないが、基本的な運営は、目利きの機能を見ても財務管理の機能を見ても、経産省の職員に求められるスペックとは違うもの」と答弁した。
CJ機構では専務執行役員のポストを、設立以来、財務省、経産省からの〝退職者〟が占めており、投資先管理にかかわる会議に参加している。これについてCJ機構は「専務執行役員は国家公務員を辞職して就任している」とする。しかし、これまで専務執行役員を務めた3人は、財務省出身の2人は財務省に、経産省出身の1人は復興庁に、現在、在籍している。
そもそも、CJ機構への出資額は国が586億円、民間企業が107億円(2017年4月現在)であり、財政投融資にて調達された公的資金が8割強を占めている。CJ機構をたたむ時にその収支が赤字であれば、それは国の債務に上乗せされ、ひいては国民負担で賄われることになる。
CJ機構は出資案件のKPI(主要成果指標)として、個別案件で5~7年で概ね1・5倍、すなわちIRR(内部収益率)に換算すると約6~8%、機構全体では長期で1倍超の収益を得ることを掲げている。まずは設置期限の20年が過ぎたときに損をしていないか、が評価基準であり、個々の出資案件において、その都度、投資収益を問われることはない。