2024年4月26日(金)

Wedge REPORT

2017年5月29日

CIOの投資実績も非公開

 安東会長は「民間のPE(プライベート・エクイティ)ファンドではIRRが15~25%が普通の目線だ。まして投資は概して事前の目標収益率より下振れするもので、それを長期で『損を出さなければいい』などという観点で投資しているとしたら、収益の黒字化は見込めない。公的資金が投入されているファンドであればなおさら、実績がある投資のプロが運営すべきだ」と指摘する。

 まして投資の判断基準に「海外の需要を開拓する」などの政策的意義が入るCJ機構の投資判断は、投資収益を追求する民間の投資ファンドより難しい。しかし、CJ機構の太田伸之社長はファッションブランド・イッセイミヤケの社長や百貨店・松屋の常務執行役員を経た人物で金融商品を扱った経験はない。そこで、最高投資責任者(CIO)こそ「投資のプロ」であることが重要となる。

 「通常の投資ファンドであれば、主投資担当者は『キーマン』として組合契約書に明記され、投資家はその人物の投資理念やトラックレコード(過去の投資実績)に照らして投資の可否を判断する。官民ファンドの場合、国民が投資責任者の人選の妥当性について、当該トラックレコードをみて判断できることが望ましい」(安東会長)。そこでCJ機構のCIOを務める小倉治氏の投資実績について照会したところ、「公表すべき理由はない」とされ分からなかった。

 加えて、「本来、投資ファンドでは出資してくれる投資家の利益の最大化を目指すことでガバナンスが効くが、国が主な投資家のためにそれがない」(安東会長)と語る。民間のPEファンドではファンド運営者自体も身銭を切っていることが多く、投資案件の収支は投資担当者自身の業績や生活にも直結するが、官民ファンドにはそれがないのだろう。

 また、CJ機構の投資先の決定機関であり、「最後の砦」というべき海外需要開拓委員会も問題を抱えている。同委員会の委員であるCJ機構取締役の川村雄介氏は、官民ファンドを含め、政策金融のあり方について検討する「財政制度等審議会財政投融資分科会」の委員であり、また「官民ファンドの活用推進に関する関係閣僚会議幹事会」の有識者委員でもある。


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