戦闘員の家族狙う?
東南アジアの他でもエジプトでは26日、古代キリスト教の一派コプト教徒が乗ったバスが襲撃され、28人が死亡するテロが発生、エジプト空軍機が隣国リビアのテロリスト訓練キャンプを空爆した。欧州では英マンチェスターのテロ事件以降、ISのテロが切迫しているとして、厳戒態勢が続いている。
シリアやイラクの戦場では、米軍の空爆やイラク政府軍、地元の武装勢力などにより、ISが日々追い詰められている状況に変わりはないが、ここにきてクローズアップされているのが、米軍がIS戦闘員だけではなく、戦闘員の家族を狙って攻撃しているのではないか、との見方だ。
シリア人権監視団によると、5月25、26日の両日、IS支配下のシリア東部デリゾール県マヤディンが米軍の攻撃を受け、106人が死亡したが、被害者のほとんどがIS戦闘員の家族。戦闘員の子供たちも42人含まれているという。
家族を故意に狙ったという見方が出るのは、トランプ大統領が選挙期間中、「ISの戦闘員が自分たちの命は惜しくはないというなら、家族を殺せばいい。彼らは家族の命は気に掛けるからだ」と語っていた過去があるからだ。ISの悪行を見れば、家族を狙うのは当然という賛同の声がある一方、民間人である家族を標的にするのは戦争犯罪を禁じたジュネーブ条約違反だとの批判も強かった。
オバマ政権からトランプ政権に交代してから交戦規定が緩和され、現地の指揮官に攻撃権限が相当委譲されるようになり、攻撃までの時間が大幅に短縮され、ISの弱体化に役立っている。しかし、民間人の被害が増えているのも事実だ。家族を標的にしているのかどうか、この是非をめぐる論議はIS壊滅まで続くことになるだろう。
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