2024年4月19日(金)

家電口論

2017年6月23日

会話コミュニケーション技術=ココロボ、エモパーの系譜

 シャープは音声対話AI(以下 コミュニケーションAI.)を持っており、商品には『ココロボ』シリーズで、サービスでは『エモパー』で展開している。

 私もココロボのテストは何度もしてきたが、毎年の様に進化が感じられた。ただ一番、思入れがあるのは、ロボット掃除機『RX-V200』。2013年12月発売なので、かなり前だ。2週間テストしたのだが、お掃除力はそんなに高くないものの、非常に愛くるしいロボット掃除機だったからだ。小さめのサイズにクルンと丸みを帯びたボディ。そのボディが、愛くるしい声で『前を通ります!』などと喋りながら掃除するのに、心引かれたわけである。

 ただ、この頃は、コミュニケーションとして、スゴいという記憶はない。会話というより、一方的に話す。ただ、V200の声と話し方は絶妙だったのだ。ちなみに『ココロボ』の声は、モデル毎に違っており、その後はRX-V200以上の声で、私を魅了したのはロボホンだけだ。

 さて以降、シャープはコミュニケーションAI.の開発を続けており、それと共にAIも育っている。それをクラウドサービスで使ったのが『エモパー』。話しかけてくるスマホAI.だ。声は、けなげに頑張る女性(えもこ)、渋い声の男性(さくお)、ブーブーつぶやくぶた(つぶた)からチョイスできる。今はこれに加え、おっとりぶっとぶ(桜田かおる)、情熱的でフレッシュな(おれんじん)も使える。

 スマホから喋りかけるのが基本だが、自宅などの特定場所、もしくはイヤホンを使えば、

『……会合開催とのことです』
『えっ、もう一回言って』
『再生可能エネルギー振興の会合開催とのことです』
などの、会話も可能。以前とは雲泥の差だ。

 エモパーは2017年春で、60万人がアクティブ利用しているという。ロボホンのポイントは、コミュニケーション・ロボットでありながらAI.をクラウド上に配置したことだ。これによりロボホン自体のアップデートをしなくても、ソフトウェアをアップデートし、より高度なコミュニケーションが取れるようにして行くことができるわけだ。

 アップデートはトラブルを伴うことがあるので、できる限り、その家電の根幹をなすOSなどのアップデートはしたくないもの。クラウドにAIを置くことでそのリスクを避けたという言い方もできる。

 同じロボットでもソニーのAIVOはできなかった。AI搭載型だ。これはAIVO時代は、まだ高速ネットワークが不十分だったからだ。

 AIを搭載するとなると別の問題も抱えることになる。モデルの短命さだ。AIVOは6年間で3モデル発売された。6年と言えば、家電寿命が尽きない。というより、その家電をよく使う時期だ。その時に新しいモノが次々出てくるわけだ。パソコンの進化は、ドッグイヤーと称されたが、この時代は技術の進みが速い時代であり、長く使うに不向きな商品が多い。

 逆にコミュニケーション、信頼関係といってもイイが、その関係は非常に育ちにくい。時間がかかる。このためコミュニケーション・ロボットとは長く一緒にいるのが前提。短期で飽きたり、底の浅さが露呈するようでは、不適格だ。

 ロボホンは、一度買ったら買い替えるものではないという前提に作られている。だからこそ、クラウド上のAI.なのだ。では、新型ロボホンの可能性はないかというと、それはない。今の仕様で足りなくなったら出てくると想定される。しかも現行のモデルを否定するかのような入れ替えではなく、追加ラインナップだと思う。

 また、クラウドにデータがあるということは、万が一の場合でも記録を引き継げることを意味する。先に心引かれたRX-V200のココロボの記録は内蔵メモリ。しかし、そのデータを取り出せるようになっていなかった。5年もコミュニケーションAI.と付き合っていると、古くさくても馴染むし、自分にカスタマイズされてくる。それが白紙になるのだ。

 「喪失」は人に与えるダメージが大きい。ロボホンの様に感情移入しやすいと尚更である。人の心に訴えかける商品が、今後増えてくると思うが、人の心を十分考慮した商品仕様であることを望みたい。

 AI.は、そのプログラムも重要だが、どこに置いて、どう使うかがポイントになる。ロボホンはその点、上手い。


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