2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年6月29日

 先般の外遊を基礎にしたトランプの米国第一の考えを説明、それを弁護する記事です。評価できる点もあり、余り評価できない点もあります。恐らくマクマスターやコーン等が持つ伝統的な考えに対して、バノン等の特殊な世界観論者の手が入ったものでしょう。伝統的な人々が何とか非伝統的な人々の考えも配慮して説明した苦心の記事とも言えます。

「米国第一」は孤立主義ではない

 ともかく、世界に関与し、米国がリーダーシップを取っていくとのメッセージを出していることは良いことです。「米国第一」は孤立主義ではないということでしょう。同盟国との連携を重視するとの考えも出ています。しかし、NATO首脳会議は波乱だったようです。選挙運動中のレトリックがぶり返し、トランプ大統領は、普通でない言葉で欧州諸国が防衛費支出目標を守っていないと非難しました。

 この記事は「NATO首脳会議では大統領はNATOと第5条へのコミットメントを確認した」と書いていますが、実際は、少なくともNATO首脳会議では第5条には明示的に言及しませんでした。問題は、欧州諸国の指導者達を大いに困惑させ、これら指導者の対トランプ信頼を大きく傷つけたことです。論説は米国への尊敬の深化について言及していますが、尊敬の念は増えるどころか減っているのが実情ではないでしょうか。

 この論説の評価できない点は、トランプ政権の執拗な世界観が記載されていることです。筆者の考えというよりもトランプ政権の他の一派の考えなのでしょう。例えば、『大統領は、世界は「グローバル・コミュニティー」ではなく、国家、非国家主体や企業が関与しあい、利益を求めて競争する「アリーナ(舞台)」だとの明確な考えを持って外遊した』とのくだりです。これは、世界の現状と戦後世界の歩みを全く理解しない世界観です。それは、程度の差ではなく、確信のようです。

 このような特殊な、歪曲された世界観は残念ながらトランプ政権の特徴であるとともに限界を表しています。気候変動に関するパリ協定離脱問題を見ても、トランプ政権内の意見の対立が深まっています。トランプには、米国大統領である以上うまくやって貰いたいと願うばかりです。

  
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