前向きに読み解く経済の裏側

2017年8月21日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

バブルが疑われるなら銀行は融資をするな

 銀行の融資は、もともと「成功すれば借り手が儲ける。銀行の儲けは利息だけ」「失敗すれば銀行は貸出元本を失う」という商売です。だから、銀行は貸出の際に慎重に判断するのです。金融庁に「担保に頼らず、事業性を見て貸せ」と言われても、どうしても担保を取らざるを得ないのです。

 もっとも、バブルの時は、担保をとってもあまり意味がありません。バブル崩壊によって担保の価値が大幅に下がってしまうからです。つまり、バブルか否か疑わしい時には、銀行は貸出をすべきでない、ということになります。「もしも現状がバブルでないならば、貸出実行によって金利収入が得られるはずだ」「もしも現状がバブルであるならば、貸出実行によって元本を損するはずだ」ということなので、どう考えても貸すべきではありません。

 それなのに、どうして各行は競って貸家建設資金を貸しているのでしょうか? 銀行ごとに事情はあるのでしょうが、日銀のマイナス金利政策などによって各行の利ざやが縮小しており、厳しい情勢なのでリスクを承知で取り組んでいる、という所もあるかもしれません。「空腹なので、毒かもしれないが、目の前の饅頭を喰う」というわけですね。

 銀行によっては、前回バブル崩壊後の人事を誤った後遺症が生じているのかもしれません。「前回のバブルが崩壊した時に、バブル期に貸した担当者は出世して異動していった後であり、後始末をさせられた担当者が降格された」といった人事が行なわれた銀行においては、各行員が「バブルかもしれないが、バブルが崩壊するまでに異動になれば良いのだから、とにかく貸出を増やして出世しよう」と考えているかもしれません。

 平成バブルは、不動産価格が暴騰して暴落しましたから、銀行の不良債権が比較的早期に判明しましたが、貸家の方は借金返済が滞り始めるまで時間がかかるでしょう。「30年分の家賃収入で返します」という融資は、たとえ今月の家賃収入がゼロだったとしても、今月の返済額は僅かですから、何とか返済できてしまうからです。つまり、貸出を実行した担当者が異動するまでは、不良債権化しない、ということです。そんなことまで考えて貸出に励んでいる銀行員は、いないと信じたいですが(笑)。

  
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