2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年9月4日

 ロサンゼルス・タイムズ紙が「イラン核合意についてゲームをするのはやめろ」との社説を7月22日付で掲載、トランプ政権がイラン核合意をもてあそんでいる、と批判しています。社説の論旨は次の通りです。

(iStock.com/Suto Norbert/PrettyVectorsTomacco/eriksvoboda/Hemera)

 トランプ政権はイランが核合意を順守しているとの認定をしたが、認定されないのではないかと見えた時があった。

 政権の高官は決定を説明する資料を配り、記者よりの問い合わせを受け付けるとしていた。しかしその後、トランプ大統領がティラーソン国務長官、マティス国防長官、マクマスター国家安全保障補佐官を含む重要な補佐官の勧告に署名することを躊躇した。他の分野でのイランへの強い措置を提示されて、最終的にはトランプは認定に同意した。財務省はイラン軍と革命防衛隊を支援したとして18の個人と団体の制裁を発表した。

 しかし、終わりが良かったからすべてよしとは言えない。トランプはイラン核合意を解体するとの選挙公約を実施していないが、彼は今でも合意に深い疑念を抱いている。合意がイランの核兵器取得を阻止し、イランがそれを順守しているにもかかわらずである。イランは重水備蓄で制限を超えたことがあるが、合意は一般的によく守られている。

 法律により、大統領は90日ごとにイランが4つの条件(合意を実施している、その条項の実質的違反がない、核兵器計画を進めていない、制裁解除は適切である)を満たしていると認定する必要がある。トランプ政権は繰り返しこの認定をしてきたが、この間の認定に関連した騒ぎは将来についての疑問をおこさせる。フォーリン・ポリシー誌は、トランプが、国務省ではなくホワイトハウス職員に次回の認定をやめる理由づけをするように命じた、と報じている。

 この不確実性は二つの理由で良くない。この合意を圧倒的に支持している同盟国との分裂をもたらすし、イランが合意を破棄するように誘惑しうる。イランはすでに経済制裁緩和の大きな成果を手にしている。

 トランプは候補としてこの核合意を「最悪の合意」と非難し、大統領としてイランは「合意の精神を守っていない」と不満を述べた。どういう意味かはっきりしないが、国務省の報道官は「イランの他の悪質な行動はこの核合意より出てくることが期待された地域と国際面での平和への肯定的貢献を掘り崩している」と言っている。

 オバマを含め幾人かは、合意がイランと西側との接近の始まりになることを希望しただろう。この接近は明らかに起こっていない。しかし、この合意自体は他の分野でのイランの良い行動を条件としていたわけではない。イランの悪質な行動、ミサイル実験やヒズボラ支援は核合意で禁止されていない。これらは別途扱われうる。すでに上院はミサイル実験への追加制裁を決議している。

 トランプが核合意に対する米の支持についてゲームをやめる時である。イランが順守するならば、米国も義務を果たすべきである。

出典:‘Stop playing games with the Iranian nuclear deal’(Los Angeles Times, July 22, 2017)
http://www.latimes.com/opinion/editorials/la-ed-trump-iran-20170722-story.html


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