さらに、イラン核合意順守を「認めない」とした上で、対イラン制裁の再開に関して議会に対応を委ねたのです。
ロイター及びグローバル世論調査会社「イプソス」が行った共同世論調査(2017年10月6-10日実施)によれば、トランプ大統領の支持率は36%で相変わらず低空飛行を続けているのですが、米議会の支持率は24%でそれよりも12ポイントも低いのです。党派別にみますと、共和党の支持率は31%、一方、民主党は20%です。同大統領の支持率は、共和党と比較しても5ポイント、民主党に至っては16ポイントもリードしています。
従って、トランプ大統領は米議会に対して優位な立場にあるわけです。支持基盤を固めるためには、「議会は機能不全である」というレッテル貼りを行い、議会に責任転嫁する戦略が有効なのです。
「今に分かるだろう」の意図
選挙期間中、トランプ大統領の口癖は「私を信じてくれ」でした。ところがこの9カ月間、同大統領は「今に分かるだろう」と繰り返し述べてきました。
例えば、ジェームズ・コミーFBI(連邦捜査局)長官を解任するか否かについての記者からの質問に対して、「今に分かるだろう」と回答しました。ステーブン・バノン首席戦略官兼大統領上級顧問が事実上更迭される前も、同様の表現を使用しています。トム・プライス厚生長官が辞任する直前もそうでした。記者団からの質問を巧みに「回避」する目的で用いています。
さらに、トランプ大統領は北朝鮮問題に関する質問に対しても「今に分かるだろう」と答えます。この場合は「脅迫」が目的です。狂人のように振る舞い、「この男は何をするのかまったく分からない」と北朝鮮に信じ込ませるためです。恐怖心と不確実性を高めて、相手を交渉のテーブルにつかせる狙いがあります。しかし相手も狂人なので、この手法は効果をあげていません。
今後もトランプ大統領は、自身の「争点化する力」を発揮し、「人種差別VS.愛国心」及び「政府VS.神」といった対立構図を作って、支持基盤を固めていくでしょう。支持率における米議会に対する相対的な優位性も多いに活用するでしょう。
それに加えて、これまで通り自分にとって不都合な質問並びに北朝鮮問題に対して「今に分かるだろう」と回答することは容易に想像できます。ただし、北朝鮮問題に限って言えば、いつまでも「今に分かるだろう」と言い続けることはできません。間もなく限界がくることは間違いありません。
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