定年バックパッカー海外放浪記

2017年10月29日

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自転車野郎の世界周遊旅の原動力は狩猟生活のDNAなのか

 このスペインの自転車野郎はスペインのアンダルシア地方から欧州を横断してトルコ経由でエジプトへ。その後エチオピア→ケニア→タンザニア→モザンビークとアフリカを南下して一転海路インドへ。インド南端から北上してスピティー渓谷の山岳道路を辿りカザに到達したという。

 一人用テントと寝袋で野宿しながらスペインから一年かけてインドまで来たと特段気負った様子もなく淡々と話す。これからチベット高原を越えて中国→モンゴル→中国→韓国→日本までが前半の行程という。後半は日本から空路アラスカにわたりアラスカから南北アメリカ大陸を南極の近くまで南下するという。特に予定はないが3年くらいで世界周遊が完結するようだ。

海抜4100Mから渇水期のスピーティー川の河床を眺望

 私は以前オランダの青年から聞いた話を思い出した。「人間はどうして旅をするのか。人類の歴史の大半は狩猟生活をして暮らしてきた。その長い歴史の間に食べ物を得るために絶えず移動するという生活習慣がDNAのなかに形成された。農耕社会以降現代に至るまで人類は定住するようになったが狩猟生活時代にビルトインされた“移動して生活する”というDNAが現代人にも残っている。だから人が旅をしたくなるのは本能なのだ。」

 スペインの自転車野郎も私もそうしたDNAが作用しているのだろうか。マグロはつねに泳いでいないと死んでしまうという。回遊魚として進化した結果である。人は逆に歴史の中で形成された記憶が呼び起こされて旅をするのであろうか。歴史的記憶が“遠くへ行きたい、見知らぬ街を歩いてみたい”という渇望の源泉なのだろうか。

人生の最高地点(highest point)到達

海抜4300M地点からスピーティー渓谷の北側の山々を望む

 7月16日。オールド・カザのゲストハウスを8時半に出発。ペットボトルに水を入れてポテトチップ、ピーナッツをランチ代わりにデイパックに携帯して町の北側に連なる山々に向かって歩き出す。オールド・カザが標高3600メートルである。

 山並みの峠を越えて高圧線の鉄塔が建てられている。この鉄塔を建設するために作られたと思われる工事用道路を一時間ほど歩く。途中から峠に向かって近道になっている羊飼いが歩いて出来たような細い急峻な山道をさらに2時間ほど登る。

 スピティー渓谷が眼下に広がってくる。断崖絶壁の細道を越えてゆく難所が連続する。幅が一メートルもない細道だ。狭いところは70センチくらいである。左側は岩壁で右側は谷底が真下に見える。岩壁を伝い歩きしながら進む。3時間歩いたが途中で出会ったのは測量チームの一行だけであった。

 11:30にオールド・カザから見えた峠の近くの頂きに到達。高度は約4300メートルだ。私は40代半ばにイランのテヘランに駐在していたときにしばしば週末にテヘランの北側に聳えるエルブルズ山脈に登っていた。テヘランの北側のあたりの最高地点が標高4120メートルであった。人生最高到達高度記録大幅更新。

⇒第14回に続く

  
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