オトナの教養 週末の一冊

2018年2月2日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――シルバー民主主義の存在について否定的である根拠を具体的に教えて下さい。

島澤:シルバー民主主義が存在しないと考える理由は次の通りです。確かに、少子化、高齢化の進行と高齢者ほど高い投票率を反映して高齢者の票数は無視できないほど大きくなっていますが、最近政治家たちが力を入れている幼児教育や大学教育の無償化、奨学金の拡充などの政策は、若者や現役世代を重視したものです。こうした政策からは高齢者は利益は受けませんから、シルバー民主主義が存在するならば高齢者は反対し、政治も高齢者の反対に追随するはず。しかし実際には、高齢世代を優遇したまま、現役世代を重視した政策が各党から相次いで提案されていますが、これはシルバー民主主義論では解けないパズルと言えます。こうした現象を見ても、シルバー民主主義には否定的です。

 結局のところ、シルバー民主主義が存在しているように見えたのは、たまたまこれまでは高齢者のほうが票を計算しやすかったからに過ぎず、若者や現役世代が貧困化し、政党が彼ら彼女らに再分配を行うことで票を見込めるようになってからは、若者も重視されるようになりました。その転換点は旧民主党が「子ども手当て」や「コンクリートから人へ」といった現役世代重視の政策を掲げて、自民党政権下では給付が高齢者に偏っていた点に不満を抱いていた現役世代の票の取り込みに成功して政権交代を果たした2009年にあります。

 政党から見れば、高齢世代の民意だろうが若者世代の民意だろうが、投票してくれる民意がよい民意であり、実態は民意ファーストな政治だったのです。

――しかしながら、シルバー民主主義という言葉は世間に広がっています。

島澤:シルバー民主主義という言葉が、人口に膾炙し始め、みなさん言い訳として使うようになったのではないかと思います。

 たとえば若者が、何か政治的な行動を起こそうと考えても、高齢者の反対にあい頓挫するからと諦める。つまり、シルバー民主主義を言い訳にして諦めてしまう。それによって現状は維持されたままです。

 また仮に高齢者が、自らの意見を主張し政治的に優位であったとしても、民主主義の枠内で行動しているので問題はありません。

 さらに政治は、シルバー民主主義を克服し、全世代型社会保障を実現するため、高齢世代のへの給付は維持したまま若者の給付を拡大しようとしていますが、その実態は、将来世代に負担を先送りした「全世代型バラマキ」に過ぎません。つまり、幅広い世代から民意を獲得するための「全世代型バラマキ」の正当化のため、シルバー民主主義を利用しているのです。

 このように、高齢者も政治も、そして若者までもが、シルバー民主主義の存在を自らあえて将来世代のために行動しない“言い訳”にしてしまっています。

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