オトナの教養 週末の一冊

2018年2月2日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――19年10月に消費税が引き上げられる予定です。それにより財政赤字は少しでも少なくなるのでしょうか?

島澤:将来世代に先送りされる財政赤字の解消に充ててこそ増税の意味はあると思いますが、幼児教育の無償化に充てるなど結局現役世代に使うようですから、実態は何も変わらないと思います。

――政治家がとにかく近視眼的になっている印象です。

島澤:政治家は、本来目先の利益ではなくもう少し長いスパンの利益を考える存在だと思いますが、近視眼的な民意に引きずられ過ぎているきらいはありますね。現代日本の一つの問題は現役世代が貧困化し、これまでのような寛大な社会保障制度を維持するのが難しくなってきたことにあります。したがって、政治がなすべきは、現役世代の生活を安定化することですが、これには先にも言いました通り、財政・社会保障制度の受益負担の構造改革を断行する以外には実現できません。もちろん、これにより高齢世代と現役世代の対立の高まりによって世代間闘争が起きる可能性は否定できませんが、長期的なスパンで考えれば、いまのままの財政赤字を放っておいて良い訳はないので、そのために国民を説得してほしいですね。

――それは選挙制度の問題ともつながってくるのでしょうか?

島澤:現在の民意ファーストの政治は、小選挙区制の問題かもしれません。衆議院に関しては、政策を決定し実行していくことが重要ですから、小選挙区制のままで良いと思います。しかし、参議院の存在意義は、衆議院とは違う代表が選出され、違う視点から法案を審議することに意味があると思います。ですから、参議院は比例代表制だけにして、多様化した民意を反映できるようにするのが良いのではないでしょうか。

――諸外国を見た時に、世代間格差の是正や財政赤字の解消など参考になる事例はありますか?

島澤:年金などの国の社会保障の根本に関わるようなシステムの改革には、与党だけで決定するのではなく、野党や産業界などより広い利害関係者から成る会議を開き、合意に達するべきです。スウェーデンの年金改革はまさにそういった形で行われました。

 ただ、日本のこれまでの政治を見ると合意の拘束力が弱すぎます。たとえば、橋本龍太郎内閣で合意した財政構造改革法は、与野党で合意したにもかかわらず、予想以上に不景気が長引いたため改正を余儀なくされ、小渕内閣では凍結する事態となりました。旧民主党・自民党・公明党による社会保障と税の一体改革に関する三党合意も結局なし崩し的に反故にされました。夏休みに入る子どもが宿題の計画を途中でひっくり返すのとは訳が違うのですから、一旦合意したら最後まで守って欲しいものです。

――最後にメッセージをお願いします。

島澤:読者の皆さんは、日常生活に精一杯でなかなか政治や財政赤字のことまで考える余裕はないと思います。しかも、巷ではインフレや経済成長によって痛みを感じることなく財政健全化が可能だという主張が流布され、安倍内閣もそれに乗っかっています。仮にそれが本当だとしても、受益負担の構造改革を避けていては世代間格差の解消は不可能です。現在の我々の生活が成り立っているのは、将来世代へツケを回し、政府の借金で賄っているということをしっかり認識する必要があります。また、現役世代の方々は、高齢世代に比べ、被害者意識を持つ傾向があります。しかし、将来世代から見えればどちらも加害者なんです。ただ、世代間のそうした対立は何も建設的な結果を生みません。そうではなくて、今後の日本の財政や社会保障、社会情勢がどうすれば良くなるかということに視点を置き換え、現状の生活だけでなく、もう少し将来の日本や子供たちの未来について考えていただければと思います。

  
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