2024年12月15日(日)

Wedge REPORT

2018年3月9日

 これらを簡単にまとめると、

① 「全体的に震災の情報に接する機会や関心が低下している≒情報のアップデートがすすみにくい」状態

② 福島の食品を食べることや福島への旅行に対しては、35%前後の方が他産地の一般的な食品や旅行先に比べて何らかのネガティブな印象を残している

③ 半数近くの方が、福島に暮らすことで被曝によって何らかの健康被害が発生すると信じている

 という3つのことが判ります。

 また、②と③はいずれも「福島には放射線被曝での健康リスクが残っている」ことを前提とした上でのリスク評価をしていると見ることもできます。

 ここでまず最初にお伝えしなければならないのは、「短期的であろうと長期的であろうと、避難区域外の福島県内を訪れたり、出荷されている福島県産の食べ物を食べることで放射線被曝をするリスクと、それによって受ける健康リスクは国内の他地域と全く変わらない」という事実です。「福島には放射線被曝での健康リスクが残っている」という前提は間違っています。

 2017年10月のUNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)の報告書では、東電福島第一原発事故の結果として生じた「(放射線)被曝による影響は観察されず、今後も出現しないと予測される」との従来の見解に変更はないとされました。

 UNSCEARについてはこちらの記事に詳しく書いてあります。

 福島の食品の安全性に関しても、他県と全く変わらないのが現実です。日本は食品中の放射性物質に対する基準値が世界的にも非常に厳しく設定されており(日本100Bq(ベクレル)/kg、米国1200Bq/kg)、福島県産の食品はもちろんこの基準をクリアして出荷されています。ちなみに、これまで福島県産の食品から放射性物質が検出されることすら、ほとんどありません。しかし、多くのマスメディアではこうしたポジティブな福島のニュースは、ほとんど扱われてきませんでした。こうした検査の存在自体、ほとんど知られていないとの調査結果もあります。

 また、冒頭の三菱総合研究所調査では半数近くの方が「放射線によって次世代以降の人への健康被害が起こる」という誤った認識を持っていました。これは、差別にも直結する深刻な誤解です。

 「放射線被曝による健康被害が次世代の人間に遺伝することはない」ということは、福島での東電福島第一原発事故どころか、70年以上昔の原爆による被害影響の調査からとっくに明らかになっています。

 これらが示しているのは、多くのデマやフェイクニュースが飛び交った以上、それを放置することは、誤解や偏見を沈着させたままの形で風化し、差別の温床となる、という重い事実です。


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