2024年4月19日(金)

ネット炎上のかけらを拾いに

2018年5月3日

顧客を「エリート気取り自尊心高め男子」と言えるのか

 実際、女性のタイプをいくつかに分けてイラスト化し、自嘲気味に分析する特集は女性誌(ときには男性誌でも)見かける。そこに込められているのは、「こういう女性嫌だよね」「こういう女性になっていないか気をつけないとね」といった共感や自戒である。個人的にはこうやって人の欠点をあげつらう分析や、こういった分析で自省を求めるコンテンツも時代遅れになりつつあると感じているが、女性誌の中で行われているのであれば、「同年代の女性同士でのたしなめ合い」ですむ。

 しかし、これが大手企業の広告となるとどうだろう。ツイッター上でのプロモーションは幅広い年代の男女が目にする。なぜ、こうやって若い女性だけが笑いものにされなければならないのかという疑問が出るのも不思議ではない。しかも若い女性に訴求するための販売戦略の中で。

 これまでに、顧客の男性をこうやって嘲笑するような商品プロモーションがあっただろうか。たとえば、ゲーム会社の広告で顧客層を「イキリオタク系男子」「ホストもどきナルシスト男子」などといじることが、プロモーションになるだろうか。あるいはビールのCMで、顧客層を「エリート気取り自尊心高め男子」「仕切りたがり広告代理店男子」と言えるだろうか。男性向けのビール広告といえば、炎上したサントリー頂の「コックぅ~ん、しちゃった」(※)を思い出す。男性向けでも女性向けでも、被写体にされていじられるのは結局女性なのか。

(※)サントリー炎上CMを「下品と思う人が下品」と言う人たち
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10070

女性はバカが標準設定?

 4月28日に新宿アルタ前で、性差別に抗議する街頭イベント「#私は黙らない0428」が開かれた。ネット上で見かけた映像では、ある大学院生がこんなことを言っていた。

 「とある映画監督のインタビューを雑誌で読んだとき、『バカな女子高生、バカな女子大生、バカなOLにもわかるような映画を作らなきゃダメなんだよってプロデューサーから露骨に言われたけど、そのために質を落としたくない』といったエピソードが、なんの悪気もなく書かれていました。

 なぜ、バカな大学生ではなく、バカな女子大生なんですか? なぜバカなサラリーマンではなく、バカなOLなんですか? なぜ女性はバカが標準設定とされているんでしょうか」

 確かに、こういう文脈で「バカな女子大生」とは言われても「バカな男子大生」と言われるのは見たことがない。「バカな高校生・大学生」や「バカな社会人」では指し示す範囲が広くてぴんと来ない。そこで都合よく拾われるのが「女子」「女性」というカテゴリだ。決して「男子」「男性」ではない。「女子どもにゃわからねえ」の価値観はまだ生きている。

 ラブストーリーが好きで、かわいいものを見れば機嫌がよく、周りが「面白い」と言えば「面白い」と笑う。それが「女性」だと思っている人が、まだ世の中には多いのだろう。女性は女性というだけで舐められている。

 もし映画監督が無意識のうちに、「バカなOL」ではなく「バカなリーマン」という言葉を選ぶ世の中だったとしたら、男性は今よりも自尊心を削られながら生きなければならないだろう。現実では、女性に対してだけ「バカ」がセットされることに社会が寛容である。このことに男性はもちろん、多くの女性も無自覚だ。


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