2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年5月30日

 米国、フィンランド、スウェーデンが今回の会談で防衛協力の強化で合意したのは、上記スピーチでも明確に示されている通り、ロシアによる国際法を無視した行動が共通の脅威となっているためである。3国は、防衛政策対話、政策および軍レベルでの相互運用、地域の状況認識の拡大、能力と体制の強化、合同の多国間作戦、戦略的コミュニケーション、米・NATO・EU間協力の7分野において、協力を強化するとのことである。

 フィンランドとスウェーデンはNATOには加盟していないが、1994年に平和のためのパートナーシップ協定を締結し、NATO主導の国際平和維持活動には積極的に貢献してきた。近年は、ロシアの脅威の高まりを受け、NATO加盟国との連携強化を加速させている。両国は、昨年、英国が主導する「合同派遣軍」への参加を決定した。「合同派遣軍」は、グローバルな脅威への対応、人道支援を目的として、英国主導で2015年に発足したもので、英国、デンマークやノルウェー、オランダとバルト3国(いずれもNATO加盟国)が参加している。

 上記スピーチでも触れられている通り、北極も今後の焦点となる。北極で主導権を握っているのはロシアである。米国の北極戦略は立ち遅れていることが、かねてより指摘されている。ロシアに加え、中国が今年1月に「北極政策白書」を発表して注目を浴びた。中国は、北極海において「氷上シルクロード」構想を展開し権益を確保することを目指している。「氷上シルクロード」を一帯一路構想と結び付ける方針である。現在、北極海の開発・利用におけるルール作りを中心的に担っているのは北極評議会であるが、中国は、ルール作りに積極的に関与したい意向を明確に示している。北極が注目を集めている所以である。北極評議会のメンバーであるフィンランド、スウェーデンとの防衛協力強化は、米国にとり、北極政策の面からも重要である。なお、日本は、中国、韓国とともに、北極評議会のオブザーバー国である。
 

  
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