前向きに読み解く経済の裏側

2018年6月4日

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過去5年間の延長線上で考えるのは危険

 「黒田日銀総裁が5年間も頑張ったのにインフレにならなかったのだから今後もならないだろう」と考えるのは危険です。景気が回復をはじめ、企業が生産を増やしても、当初は「社内失業者」の尻を叩くだけで足りてしまいます。それで足りなくなると社員を残業させ、それでも足りないと労働者を雇います。失業者が大勢いるため、安価な労働力を容易に雇うことが出来ます。

 さらに売上が増えると、増産のために労働者を雇いますが、労働力不足になると非正規労働者の時給が上がります。しかし、初期の段階では企業は労働コストの上昇を売値に転化しません。理由の一つは、社内失業者が真剣に働くようになって企業が儲かっていること、今ひとつは値上げでライバルに客を奪われるのが怖いこと、です。しかし、いよいよ労働力不足が深刻になると、「背に腹は代えられない」ということで値上げをする企業が出て来ます。その頃にはライバルも労働力不足で苦しいので、意外と追随値上げをしてくれる、というわけです。

 景気が回復を初めてから、ここまで来るのに5年かかった、ということでしょう。今後も物価が上がらないと考えるよりは、ヤマト運輸の値上げがインフレ時代の到来を告げる号砲であった、と考えるべきでしょう。氷に熱を加えても温度が上がりませんが、永遠に温度が上がらないと考えるのは危険なことです。そして今、まさに氷が融け終わって温度が上がり始めたのだ、と筆者は考えています。

少子高齢化の影響や大地震等のリスクにも備えるべき

 今はたまたま好景気だから労働力不足なのだ、と考えるべきではありません。「少子高齢化により、不況でも労働力不足だ」「現役世代は高齢者の介護に忙しいので、製造業で働く人がいない。物は海外から輸入しよう」、という時代が来るかもしれないからです。

 大地震のリスクにも備える必要があります。大地震と大津波で大都市が壊滅的な被害を受けたとすれば、超インフレになるかもしれません。そうなれば、1億円の預金を持っていても老後の生活には全く足りないでしょう。

 このあたりのことは、拙稿「ついにインフレ時代の到来か?地震や国債暴落などのリスクも・・・」をご参照いただければ幸いです。

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