2024年11月22日(金)

ビジネススキルを活かして楽しむ脱力系子育てのススメ

2018年6月15日

計画力を育てる会話の実践

 例えば、こんな会話です。

親「おやつ冷蔵庫に入っているから、学校から帰ってきたら食べていいからね」
子「わかったぁ」
親「今日は学校から帰ってくるの、何時ぐらいだっけ?」・・・※1
子「3時ぐらいじゃない?」
親「じゃあ、おやつ食べたとして3時30分ぐらい?」・・・※2
子「あー、うん。それぐらい。もうちょっと早いかも」
親「その後に学校の宿題をするの?」・・・※3
子「えー、ちょっとのんびりしてからがいいから、おやつの後すぐじゃないなぁ」
親(続きをうながすように、ウンウンと話を聞く)
子「4時、いや、3時45分かな。」
親「ちょっとのんびりできて、いいかもね。3時45分から宿題開始ね。」・・・※4
子「うん。そうする」
親「そうしたら、何時ぐらいには終わりそうなの? 今日の時間割だと宿題は何が出るんだっけ?」・・・※5
子「国語と算数、あと社会だから、漢字と計算プリントと、あー社会の調べ学習もありそう。時間かかるんだよなぁ、あれ」
親「全部で1時間ぐらい?」・・・※6
子「そうかな。もしかしたらもうちょっとかかるかも。でも、5時には終わると思う」
親「ママは6時半ぐらいに帰ってくるから、晩ごはんは7時半からでいい?」・・・※7
子「うん。ちょうど7時からのアニメが終わる時だし、7時半がいい」
親「オッケー、じゃあ3時45分の宿題開始をよろしくね」
子「ほーい」

 5分もかからない会話ですが、行動と時刻とを結びつける工夫が凝らされていますね。順に見て行きましょう。

自分の動きと時刻を結びつける頭の使い方

※1「帰ってくるの、何時ぐらいだっけ?」

 この問いかけで、子どもの頭の中では、学校からの帰り道、家のドアを開けるシーン、そしてリビングに入って壁の時計を見上げるまでの映像が順に浮かんできます。そして「あ、3時20分だ」と、時計の表示が見えてきます。

 または、「学校から家までが10分で、終わりの会が3時5分ぐらいに終わって、正門を出るのが3時10分だから・・・」と、順に考えるタイプの子もいます。

 子どもそれぞれのスタイルで良いのですが、自分の動きと時刻とを結びつける頭の使い方を、この問いかけで促しているわけです。

※2「食べたとして3時30分ぐらい?」

 食べ終わりを意識させる問いかけですね。おやつを食べる=休憩する=気分が満足するまでぼーっとする、という感覚で子どもが捉えてしまわないように、時刻をあえて口に出しています。しかも「ぐらい?」と、あくまでも決める主導権は子どもに渡している点もポイントです。また、「食べたとして」という仮定の問いかけを選んでいることも、子どもの計画性を育てる小さな工夫になっています。

一つの行動の終わりを決めることは、
次の行動の始まりを決めること

※3「その後に学校の宿題をするの?」

 おやつで意識した時刻を、次の行動の学校の宿題につなげていく工夫です。一つの行動の終わりを決めることは、次の行動の始まりを決めることでもあるという感覚を養う意図があります。学校の宿題はやることがもともと決まっているので、親の側から話題に出しやすいメニューでもありますね。

※4「いいかもね」「3時45分から宿題開始ね」

 子どもが自分で決めたことを、まずは「いいかもね」とポジティブに承認しています。自分で決めたことをお父さん、お母さんが「いいね」と言ってくれるということは、子どもの自信に繋がりますし、認めてもらえたのだから約束を守ろうという意欲にも繋がっていきます。さらに、子どもの言葉を繰り返して(バックトラッキング)いますね。あなたの話をちゃんと聞いているよというメッセージであり、子ども自身にも自分が言ったことを改めて意識できる機会を渡しています。行動意欲を高める工夫というわけです。

タスクの所要時間を予測する力をどう育てるか

※5「今日の時間割だと宿題は」

 子どもが自分で計画を立てて実行していけるようになるために、一つ大きなステップとなるのが「タスクの所要時間を予測する力」です。子どもに限りませんが、自分が何にどれぐらいの時間をかけているのかということは、意識的に計測しないと正確には分からないものです。ですから、まず予測を立ててみて、実際にやった後にどれぐらいの時間がかかったのかを振り返るというアプローチを子どもにも教えてあげる必要があります。その際、予測の精度を上げていくには「行動を具体化する・細分化する」ことが有効です。ここでは、「今日の時間割だと」と、子どもが宿題の内容を具体的に考えやすいように導いていますね。

※6「1時間ぐらい?」

 宿題行動の具体化をしましたから、このタイミングでまた「時間」と繋げる問いかけを行っています。「どれぐらいかかりそう?」と聞くよりも、「1時間ぐらい?」と具体的な時間を口に出したほうが子どもは自分の予測を言いやすいでしょう。文章のたたき台を渡して修正させてあげる感覚ですね。

サンドイッチ型「褒める仕組み」の完成!

※7「晩ごはんは」

 前日の夜に朝ごはんの時刻を決めることで、朝のリズムを作りました。同じように、晩ごはんの時刻を朝のうちに決めておくことで、夕方から夜にかけての過ごし方にメリハリをつけていくことができます。21時30分に寝る習慣だとして、17時から21時30分という時間枠をそのまま子どもに渡すと、時間はまだまだあるという感覚になって、行動の着手が後回しになる恐れがあります。しかし「晩ごはん」で区切ることで、子どもは17時から19時30分の過ごし方と、晩ごはんを食べ終わってからの20時過ぎから21時30分までの過ごし方とに分けて意識できるようになります。時間がコントロールしやすくなるので、遊びの予定も、学校の宿題以外の勉強メニューも、何を・どれぐらいの時間をかけて・いつ・やるのかが決めやすくなるでしょう。

 こうして朝ごはんミーティングで1日の予定が立てられたら、あとは帰宅後にどれぐらい実行できているかを聞いてあげて、一つ一つを「褒める」だけです。これでサンドイッチ型「褒める仕組み」が完成!

 この朝ごはんミーティングの取り組みを、ぜひ3カ月実践してみてください。お子さんの計画力が日に日に高まることを実感いただけると思います。

 さて次回は「自己管理力を育てるテスト直しのコツ」についてお話ししたいと思います。せっかく頑張ってテストを受けても、○×をつけられておしまいというのではもったいない。テスト直しの一工夫で、子どもの自己管理力を育てることができるんです。ご期待ください。
 

  
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