ナジブと中国の闇にどこまで切り込むか
この東海岸鉄道をはじめ、マレーシアでの一帯一路案件は他の国を圧して多い。2016年、ナジブ前首相は中国訪問で大歓待を受け、李克強首相と会談し、東海岸鉄道計画の推進に舵を切った。しかしながら、その必要性や採算性について国内で議論はほとんどなく、中国のプランを丸呑みしたという印象が強く、国際的にも国内的にもその必要性には疑問の目が向けられていた。
東海岸鉄道は、一帯一路関係案件のなかでも戦略的重要性の高い案件であるだけに、その衝撃は大きい。習近平指導部は今後、マハティール首相に対して巻き返し工作を展開するだろう。それでも頑固で大国嫌いで知られるマハティール首相が意思決定を変える可能性は低い。中国とのもう一つの協力事業であるパイプライン事業が、ナジブ前首相が逮捕された政府系投資ファンド「ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)」問題と深い関連を持っている可能性が高いからだ。パイプライン事業の資金の一部が、巨額資金が行方不明になったとされる1MDBの関連事業に流用されていた可能性があると報じられている。
マレーシアの対中依存はナジブ政権時代に一気に深まった。その深淵はまだ覗かれていない。中国の資金が、ナジブ前首相の腐敗問題に直接関わっていたとすれば、マレーシアの対中協力案件はすべて当面凍結されるだろう。中国とナジブ前首相の間に広がった闇の世界にどこまで切り込むのか、マハティール首相のさじ加減すべてにかかっている。
■修正履歴:1頁目の「ECRC」は正しくは「ECRL」でした。訂正してお詫びいたします。該当箇所は修正済みです。(編集部 2018/7/16 17:40)
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