また、米議会は昨年8月、対ロ制裁を維持・強化する法案を成立させ、政権が勝手に制裁を解除できないようにしたが、議会の対ロ強硬姿勢は、今回の米ロ首脳会談を受け、強まりこそすれ、弱まることはないであろう。
興味深いことに、ロシアでも今回のトランプの言動に批判があるという。7月17日付けウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事‘Russians Also Criticize Trump for His Helsinki Summit Conduct’は、トランプの米国内での政治力が弱まれば米ロ関係の再構築に影響があるとの懸念がロシア内にあると指摘している。同記事によれば、ロシアのシンクタンク「ロシア外交問題評議会」のコルトゥノフ会長は「選挙干渉についての疑いを晴らさなければ、不信感があらゆる分野に波及する」と言っている。つまり、ロシア側から選挙干渉を否定することはありえないから、トランプの側で強く否定してほしかった、ということである。プーチンにとっては「勝ちすぎ」であったと言えるかもしれない。「勝ちすぎ」は反動をもたらすものである。ウクライナへの防衛支援強化などはそのよい例であろう。
トランプは戦後のいわゆるリベラルな国際秩序、同盟に大きな損傷を与えている。Pax Americana も終わったかと思う人もいるであろう。ただ、歴史を振り返ると、物事は、そのように一直線には進まないとみておいてよいのではないかと思われる。
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