2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年8月9日

 上記声明は、自由で開かれた、国際的ルールに基づいたインド太平洋の構築を求めており、それとは反する行動を止めない中国を、名指しこそしないものの強く批判する内容である。これまでの米豪の立場にいささかの揺るぎもない。

 南シナ海問題については、上記声明でも立場を明確にしている他、今回の2プラス2に際しての共同記者会見で、マティス国防長官は、米豪が航行の自由作戦等の軍事作戦で協力することを明言している。南シナ海における航行の自由には、米豪だけでなく、英国やフランスなども急速に関心を示すようになってきている。歓迎すべき動きである。こうした流れの中で、今後、日本としては、米国等の航行の自由作戦を歓迎し支持を表明するだけでよいのか、よく検討しなければならない場面が出てくるかもしれない。

 豪州内では、最近、中国を念頭に、外国勢力の政治への干渉や、安全保障上機微なインフラへの外国投資を排除できるよう、法整備が進みつつある。米海兵隊がローテーション配備されているダーウィンの港湾にも中国が投資している。米海兵隊の配備が強化されるにしたがい、豪州と中国との間で、これは深刻な問題ともなり得る。

 豪州の中国に対する警戒感の大きな原因の一つは、豪州の「裏庭」に当たる太平洋島嶼国への中国の進出である。上記声明において、太平洋島嶼国への支援における協力を謳っている他、「原則に則った持続可能なインフラ開発を支持」とあるのは、そういう文脈にも沿っている。つまり、中国の「無原則で持続可能ではない」インフラ支援を批判している。既に、米国の海外民間投資公社(OPIC)が日豪のカウンターパートとの良質なインフラ輸出について合意するなど、日米豪のインド太平洋における良質なインフラ支援での協力は進んでいる。島嶼国側には、豪州が「宗主国」のように振る舞うことに反発もあり、丁寧に進めなければ、島嶼国をかえって中国側につかせることになりかねない。太平洋島嶼国と良好な関係にある日本の果たすべき役割は大きいと言えるだろう。

 米豪関係は、戦略的環境が大きく変わるとは思われない以上、安全保障を中心に協力強化が一層進むと見てよいであろう。
 

  
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