2022年12月6日(火)

Wedge REPORT

2018年9月4日

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片田敏孝 (かただ・としたか)

東京大学大学院情報学環特任教授・日本災害情報学会会長

1960年岐阜県生まれ。豊橋技術科学大学大学院博士課程修了後、群馬大学大学院教授などを経て現職。東京都江東5区が組織した水害対策協議会のアドバイザーも務める。著書に『人が死なない防災』、『人に寄り添う防災』(共に集英社新書)など多数。
 

 特別警報は、従来の大雨警報や洪水警報では、国民の適切な災害対応行動に繋(つな)がらない現実を踏まえて、防災機関としての気象庁が、最大限の危機感を持って国民に避難行動を促す情報として導入された。いわば気象庁からの最終通告である。その特別警報が11府県に出されるほど事態が深刻であったこと、その発表を予告までして伝えようとした気象庁の努力を特別警報の乱発と指摘し、批判するような姿勢は正しいのだろうか。そこに日本の防災を改善する本質があるとは思えない。

 行政対応の不備への指摘は、各自治体の対応に対しても数多く見られた。確かに自治体によっては避難指示が気象庁の特別警報の発表以降になったり、発災の直前になったりした事例もあり、避難指示という自治体の出す最上位の避難情報が遅くなる事例も見られた。また、急展開する事態や従来にはない災害進展の中で、今回の豪雨災害はその発生形態も従来にない状況が多く見られ、行政の対応に混乱が生じたのは確かである。行政の対応力の一層の強化は必要であろう。

 しかし、避難指示の出し遅れを批判される自治体も、その多くは避難勧告を適切に出している。避難勧告は明らかに住民の避難を呼びかける情報である。昨年までの行政対応批判の中心がこの避難勧告の出し遅れであったが、今回は明らかに改善が図られた。

 ハザードマップに対する批判もある。地域ごとのハザードマップ等のマニュアルも災害のたびに改訂され、技術的には大きな問題がない状態にまで達している。倉敷市真備町における浸水被害もハザードマップはおおむね的確に予測していた。しかし、配布されたハザードマップをどれだけの住民が普段から見ていただろうか。そこに示される情報をどれだけ今回の災害対応に適切に利用したのだろうか。

(出所)各種資料を基にウェッジ作成 写真を拡大

 ハザードマップがいくら改善されようが、それを見なかったり、利用しなかったりする住民の実態を見るとき、行政の周知不備のみを問題視することに同意はできない。行政には住民に危険を知らせる努力を最大限行う義務があり、それが不十分ならば改善する必要はある。しかしそれと同時に、住民にはそれを最大限に活かすことが求められるのではないだろうか。
 
 荒ぶる気象災害に対して、災害対応に関する行政の一層の努力は必要である。しかし、行政対応を強化するだけで日本の防災力が高まるとは思えない。気象庁や行政の気象情報、避難情報を適切にわが身の安全に役立てようとする姿勢、自らの命を守る主体性は、今の国民に十分に備わっていないのが現状であり、その改善こそがわが国の防災に求められていることではないだろうか。

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