2022年12月10日(土)

Wedge REPORT

2018年9月4日

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片田敏孝 (かただ・としたか)

東京大学大学院情報学環特任教授・日本災害情報学会会長

1960年岐阜県生まれ。豊橋技術科学大学大学院博士課程修了後、群馬大学大学院教授などを経て現職。東京都江東5区が組織した水害対策協議会のアドバイザーも務める。著書に『人が死なない防災』、『人に寄り添う防災』(共に集英社新書)など多数。
 

 天気予報も伝えていない大雨が急に降り出したとき、人は誰しも間もなくやむであろうと考えるし、大雨の中で避難することの抵抗感も手伝って、避難を思いとどまる傾向が強い。加えて、人の心の特性として、わが身に迫る危険を積極的に想起することは難しく、わが身の安全だけであればしばらく様子見となりがちである。

 しかし、「みんなで」逃げるとなれば状況は異なってくる。「みんな」の中には、幼き頃お世話になった近所の高齢者なども含まれる。自分で逃げられない人まで含めて「みんな」が逃げるためには、一人で逃げるときより早い段階から行動を起こす必要がある。それが結果として、自分も高齢者も早めの避難をすることに繋がっている。重要なことは、地域のみんなが互いに思い合えるコミュニティがあるかないかであり、それが地域の防災力の源泉となっている。

 各地の災害現場を見て思うことは、人は自らの命をも危険だと感じたとき、まず思うことは自分の大切な人の命のことである。大都市圏の帰宅困難者問題も、自らが置かれた状態に危機感を抱けば、自分のこと以上に家族の安全が気になり人々は万難を排して自宅を目指すことになる。

 わが国の防災に今求められるのは、自分、家族、そして地域にいる大切な人の命を「みんな」で考えて守る主体性であり、そんな住民の思いに最大限応える行政の努力なのではないだろうか。

  
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◆Wedge2018年9月号より

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