2024年4月25日(木)

Wedge REPORT

2018年10月4日

 CEATEC JAPANに出展する企業に共通しているのは、デジタルトランスフォーメーションの時代を迎え、競合相手が業界内だけでなく、業界外からも生まれることを認識したり、新たなテクノロジーが競争環境を変えることを理解していたりする点だ。

 Uberの登場によって、タクシー業界が激震に見舞われた米国の事例は、どんな業界でも、どんな国でも起こり得る、という危機感を持った企業ばかりであるともいえる。

 CEATEC JAPANへの出展を通じて、共創のきっかけを模索し、持続的な成長や、新たなビジネスの創出を目指す企業も少なくない。従来はBtoCの展示会であったものが、BtoBあるいはBtoBtoCの展示会へと、明確に移行しているともいえるだろう。

 実は、CEATEC JAPANを主催する3団体のひとつである一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、2017年5月、定款を変更。従来は、従来の「エレクトロニクス製品を生産する企業」であった会員資格を、「エレクトロニクス製品を使用し、サービスを提供する企業」にまで範囲を広げている。

 すでに、トヨタ自動車、JTB、バンダイナムコ、LIXIL、TOTO、セコムなどが、JEITAの正会員として加盟している。

 JEITA自らが、ITを活用する企業までを取り込んだ業界活動を開始。それらの企業との具体的な共創の場として位置づけているのが、毎年秋に開催されるCEATEC JAPANということもできる。

主催3団体の会長基調講演を初めてやめる

 もうひとつ、今年のCEATEC JAPANで興味深いのは、開催初日に行われていた主催3団体の会長による基調講演を初めて取りやめ、様々な産業界のトップが基調講演を行うことになった点だ。

 具体的には、コマツの大橋徹二代表取締役社長兼CEO、Preferred Networksの西川徹代表取締役兼CEO、ローソンの竹増貞信代表取締役社長、ファナックの稲葉善治代表取締役会長兼CEOの基調講演が予定されている。

 これまでの各団体の会長会社のトップ講演は、業界動向を説明することが中心となったり、会長各社の現状を紹介したりといったケースが多く、残念ながら、新たな方針や技術、製品が発表されることはなかった。

 だが、昨年も行われたファナックの稲葉善治代表取締役会長兼CEOの基調講演では、講演日前日から発売された工場用IoTシステム「FIELD system」の説明に時間を割くなど、同社の新たな取り組みを交えた講演内容となり、来場者からの評価も高かった。

 今年は、その評価をもとにして、会長会社の基調講演を無くすという、業界団体主催の展示会としては異例の措置を取ることになったのだ。

 「各社のフロア展示と、基調講演を聴いてもらえれば、どんなことに取り組んでいるのかを、より深く理解してもらうことができる」(CEATEC JAPAN実施協議会の鹿野エグゼクティブプロデューサー)ということを重視した結果の措置といえるだろう。

 実は、CEATEC JAPANの方針転換によって、IoTを軸としたソリューション展示が増加しており、展示を見ただけではわかりにくいという事態が発生している。

 そこで、CEATEC JAPANでは、コンファレンスとの連動を重視。今年は、約110のコンテンツを用意し、展示とコンファレンスを「対」にした体験を提案している。これを「CEATEC体験」と呼んでおり、基調講演の人選も、こうした狙いから行ったといえる。

 しかし、出展社数が大幅に増えないなかで、これだけ新たな出展社が増加していることは、CEATEC JAPANの新たな方向性では、展示をする意味がないと判断する企業が一定数いることの裏返しでもある。CEATEC JAPANの出展社数が増加し、来場者が回復基調に転じたとしていても、すべての出展社、来場者が満足しているわけではないということだ。

 たとえば、ここ数年のCEATEC JAPANで、卓球をするロボットを展示し、黒山の人だかりになるほど、来場者の関心を集めていたオムロンは、今年は出展を取りやめた。また、ウェアラブルデバイスが注目を集めていたエプソンも今年は出展しない。

 そして、電機大手各社から、年末商戦向けに発売される新製品を見たいと思って、長年、CEATEC JAPANを訪れていた来場者にとっては、BtoBの色彩が強くなったCEATEC JAPANは魅力が薄くなったのは確かだろう。

 とくに今年の場合は、12月1日から、新4K衛星放送が開始され、各社が発売する4Kテレビを、CEATEC JAPANの会場で、いち早く見たいと思っていた来場者も多かったはずだ。だが、ソニー、パナソニック、東芝の新たな4Kテレビは見ることはできない。出展する日立製作所も、自社ブランドのテレビからの撤退を発表したばかりだ。展示が期待できるのはシャープと三菱電機だけである。


新着記事

»もっと見る