頭痛というのは、検査でハッキリと数値が出るものではありませんので、他人にわかってもらえない。そこが一番頭痛の厄介なところです。そこで我々のクリニックでは、患者さんに「頭痛ダイアリー」をつけることを勧めています。頭痛ダイアリーは、頭痛の起こり方や痛みの強度、時間、服用した薬、仕事の忙しさ、天候、女性なら性周期などを記入することで、どんな時に頭痛が起こりやすいかを把握することができます。こうした情報は、医師にとっても非常に重要な情報になります。
――いま話に出ましたが、頭痛は数値に出ないので、人に伝わりづらいというのは特徴ですね。
坂井:そこが一番難しいところですね。たとえば、片頭痛は男性よりも女性に多いのですが、会社で女性が片頭痛で休んでもなかなかその辛さが理解されません。性周期の変化や、出産後などの大変な時期に頭痛がひどくなることもあります。
一般的に日本では「たかが頭痛」などと思われがちです。その辛さがどんなものか、どれくらいの社会的な損失があるのかが世の中であまりにも知られてもいない。海外では頭痛は病気として認識されています。ですから、現在我々の頭痛に関する知見を世の中にすべて伝えられればという思いで今回『「片頭痛」からの卒業』を執筆しました。
冒頭で、頭痛の種類は367あるとお話しましたが、最初に診断基準がつくられた目的は、頭痛は精神的なもので起きるものではなく、ひとつの病気であるとして研究を進めるためだったのです。
――男性に片頭痛がないというわけではないですよね。
坂井:女性により多いというだけです。実際には、男性でも片頭痛を抱え、我慢しながら仕事を続けている方も多い。日本社会では、いまだに責任ある立場に男性が多いため、たとえ片頭痛が起きても、耐えながら仕事をしている男性は多いと思います。そうなると非常に仕事の能率が悪くなり、社会的な損失に繋がります。
片頭痛の特徴として、休日などのホッとした瞬間に起こる場合が多い。小さな子さんが休日にパパに遊んでもらおうと思っても、痛みで寝込んでいる。するとお子さんは「パパは僕たちのことが嫌いなんじゃないか」と思ってしまう。そういった辛さもあります。慢性頭痛を抱えている人は多いですから、我慢せずにしっかりと治療してほしいですね。
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