日常生活でよくある体の不調の一つが頭痛だ。「頭痛なんて我慢すれば大丈夫」と思う人もいるかもしれないが、実に日本人の10人に1人は片頭痛で悩んでいる。この身近な病気は一体どのようなメカニズムで起きているのか。また、ついつい頭痛薬を飲みすぎて起きてしまう弊害とはなにか。『「片頭痛」からの卒業』(講談社現代新書)を上梓した片頭痛の世界的権威で埼玉国際頭痛センター長の坂井文彦医師に話を聞いた。
――長年、頭痛を研究していて、特に専門である片頭痛とは一言で言うとどんなものでしょうか?
坂井:脳科学の立場から見れば、脳の中の「ダイナミックな変化」によって起きるのが片頭痛ですね。片頭痛の研究から得られた知見は、脳科学全体の研究をリードしている面もあります。
――片頭痛で悩んでいる方も多いと聞きます。具体的にはどんな症状なのでしょうか?
坂井:実は、頭痛と言っても国際頭痛学会の基準である『国際頭痛分類・診断基準』では367種類に分類されます。そのなかに「慢性頭痛」や「一次性頭痛」があり、「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」の「三大慢性頭痛」が身近でしょう。
片頭痛の主な症状は、月に2~4回程度、ズキンズキンと脈打つ痛みが頭の片側、もしくは両側に起き、1~2日続くのが特徴です。
緊張型頭痛は、首や肩が凝り、頭のなかに重さや圧迫感を感じ、1日中続きます。最近では、この2つを混ぜたような慢性片頭痛の患者さんも見受けられます。慢性片頭痛は、片頭痛が起きない日は、緊張型頭痛のような症状が起きます。
群発頭痛は、片目の奥がえぐられるような痛みが、毎日1~2時間、1~2カ月間続くのが特徴です。
――これら三大慢性頭痛は、同じようなメカニズムで起こっているのでしょうか?
坂井:MRIなどの画像では、現在共通のメカニズムはまだわかっていません。
ただ、片頭痛は、セロトニンという脳内物質の分泌量の低下が、脳内の血管を拡張させ引き起こすことがわかっています。
――緊張型頭痛や群発頭痛が起こるメカニズムについてはいかがでしょうか?
坂井:緊張型頭痛は、ストレス頭痛とも言われ、精神的または身体的ストレスにより、筋肉が収縮し、血行が悪化し、筋肉の凝りにより起こります。
群発頭痛のメカニズムは、まだまだ賛否両論ありますが、現在のところ、脳のなかの目の奥にある太い血管が拡張しているという説が有力です。
これら3つの頭痛に共通の原因はわかっていませんが、頭痛による痛みや伝達、記憶、再発には似ているメカニズムがあることが分かってきました。