油用の多くは組換え品種、食用大豆は非組換え品種。用途がまったく異なり外見にも違いがある、とのことで、食用大豆に油用の組換え品種がそう簡単に混ざるわけではありません。
しかし、収穫に用いる機械やトラックなどを共用し、組換え品種を扱ったあとに非組換え品種を扱う、という場合もあります。しっかり掃除をして混入を防ぎますが、現場で混入ゼロにするのは難しいのです。
消費者庁の委託調査(2016年)では、分別生産流通管理が行われていた「非組換え大豆」18検体における組換え混入平均は0.1%、最大で0.3%でした。
とうもろこしの場合には、作物自体の性質も手伝い混入率が上がります。非組換えとうもろこし18検体における混入平均は1.0%、最大で4.1%でした。
分別生産流通管理を行ない混入5%以下であることは保証できる。でも、「不検出」は担保できないかも。そんな農産物や加工食品が相当量あるのです。
新制度案では、この層についても「任意表示」となっています。つまり、遺伝子組換えについてなにも表示しなくてよいのです。でも、事業者の中には「努力を表示で表現したい」という人たちもいます。そこで、「遺伝子組換え原材料の混入を防ぐため分別管理されたとうもろこしを使用しています」「大豆の分別管理により、できる限り遺伝子組換えの混入を減らしています」などの表示例が現在のところ提案されています。
<私見>
混入を完全に防ぐのは難しく、とくにとうもろこしは混入ゼロは無理でしょう。「遺伝子組換えでない」と表示する製品はかなり減りそうです。
「国産大豆から作られた豆腐や納豆であれば、組換えゼロ。簡単に『遺伝子組換えでない』と表示できる、これで国産振興につながる」と思う人もいるかもしれません。しかし、たとえば国内の加工工場で、国産大豆の豆腐とアメリカ産大豆の豆腐の両方を作っている場合、国産大豆の製造ラインにアメリカ産大豆がぽろっと混入、しかもその中に組換え品種がごくわずか混じる、というような可能性がない、とは言えません。
「遺伝子組換えでない」を売りたい事業者は、表示に責任を持つため、検査での確認励行も迫られるでしょう。分別生産や検査などのコストがさらに重く事業者にかかってきます。今の時代、商品の小売価格にそう簡単に上乗せできるわけではありません。
こうした状況から、豆腐や納豆などの業界は、遺伝子組換えでない=不検出に反対しています。
非常に興味深いことに、組換え反対派も「不検出では厳しすぎて、『遺伝子組換えでない』の表示が店頭から消えてしまう」と反対しています。