米国で2018年12月31日に成立したアジア再保証イニシアティヴ法(ARIA: Asia Reassurance Initiative Act)について、その外交・安全保障に関わる部分を紹介する。外交については、第1章で「インド太平洋地域における米国の政策と外交戦略」と題し2条設け、安全保障に関しては、第2章で「インド太平洋地域における米国の安全保障利益の増進」として16条設けている。以下、要点を記す。
政策と外交戦略
・これは、インド太平洋地域に関する米国の長期的戦略ヴィジョンと包括的政策を示すものである。米国や同盟諸国等の安全保障を守り、ルールに基づく経済共同体を形成し、普遍的人権を推進させるものである。
・外交戦略としては、同盟諸国と協力して、共通の挑戦に対抗し、情報共有を向上させ、防衛投資及び貿易を増大させ、相互運用性を高める。
・ASEAN、APEC、EAS等の機能的、問題解決型の地域枠組みを支援する。
・国際法に基づいた航行の自由、海洋と領土紛争の平和的解決、同盟諸国等との防衛協力の拡大に関する米国の関与を強調する。
・北朝鮮の完全、検証可能かつ不可逆的な非核化を達成する外交を追求する。
・市民社会や法の支配等を強化し、米国と域内友好国の民間連携を通して経済を拡大させる。
・インド太平洋諸国と協力して、高品質で透明性のあるインフラ・プロジェクトを追求し、自由な航路・空路を確保し、紛争の平和的解決を図る。
安全保障について
・2019から2023年度の各年度で15億ドルが国務省、国防省等に充てられる。インド太平洋地域における米国の外交利益を増進するため、友好諸国等との防衛協力を進める。特に、能力の高い同盟諸国とは、中国や北朝鮮を含む戦略的挑戦に対処する二国間・多国間の協力を行う。東南アジアでは、ISIS等に対する新たな対テロ連携プログラムを構築する。東南アジアや南アジアで海洋に関する認識を高めるプログラムを行い、そこでは、日本、豪州、インドとも協力する。
・同盟諸国として、日本、韓国、豪州、フィリピン及びタイとの協力を強化する(202条)。