2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年1月15日

・米国政府は、中国の行動に深刻な懸念を表明し、建設的役割を期待する。北朝鮮の非核化等では協力する。議会は、米国は、中国の結果重視型の決定を歓迎し、ルールに基づいた国際システムを破壊するような行動については引き続き注意喚起すべきだとする(203条)。

・米国は、インドとの戦略的パートナーシップの重要性を認識している。2017年度の国防権限法では、インドは「主要な防衛パートナー」と明記された。これは、インドとの防衛装備品の輸出入や技術の共有を容易にさせる(204条)。

・議会は、米国政府がASEANとの関係を戦略的パートナーシップに格上げすることを求める。米国はASEANの統合を促し、ASEANが豪州、カナダ、EU、日本、インド、ニュージーランド、韓国、台湾等との関係を強化することを評価する。米国はASEANと海洋分野の協力を行う。この法律の施行後180日以内に、国務長官は、米国とASEANとの戦略枠組みに関して、議会の関係委員会に報告しなければならない。それは10年後を見据えた報告で、今後5年間毎年行う(205条)。

・議会は、大統領が、ミサイル防衛や情報共有を含む日米韓三か国の安全保障協力を進めることを望む(206条)。

・議会は、自由で開かれたインド太平洋のために、日米豪印四か国の安全保障対話を進めるべきだと思う(207条)。

・米国と東南アジア諸国のインドネシア、マレーシア、シンガポール及びベトナムとの関係は強化されたが、議会は、海洋や対テロでの協力推進を望む(208条)。

・台湾との関係を強化するのは米国の政策である。1979年の台湾関係法、三つの共同コミュニケ及び1982年レーガン大統領による6つの保証に基づき、米国の台湾との約束は誠実に遵守される。現状変更には対抗し、台湾海峡両岸が受け入れる平和的解決を支持する(209条)。

・北朝鮮は、複数の国連安保理決議に違反をして核・ミサイルを開発した。自国民及び日米韓を含む外国民に人権侵害を行なった。米国は引き続き最大限の圧力をかけつつ、北朝鮮の非核化を求める。目的は、核・ミサイル計画の完全、検証可能かつ不可逆的な破棄である。法律施工後90日以内に、180日毎、5年間、国務省は議会に対して北朝鮮の状況を報告する(210条)。

・国際法に基づいた海と空の自由航行は、米国の政策である。議会は、大統領に、同盟諸国等との共同外交戦略を求める。それには、東シナ海や南シナ海での共同訓練や航行の自由作戦が含まれる(213条)。

・法律施行後180日以内に、国家情報長官は、議会の関係委員会に対して、東南アジアのテロ組織に関する報告をする(214条)。

・米国とインド太平洋諸国とのサイバー・セキュリティ対策に、2019年~2023年の予算年度に、毎年1億ドルを充てる(215条)。

・インド太平洋における大量破壊兵器(WMD)及びその運版手段の不拡散と軍備管理を進める(216条)。

 当初、多くのメディアは、ARIAの成立を、中国封じ込めの法律ができたかのように報じたが、こうして文書全体を読んでみると、必ずしもそうではない。むしろ、インド太平洋地域全体を包括した文書であり、中国を敵対視した表現は避けられている。ただし、北朝鮮に関しては、より厳しい口調である。1つ1つの政策や条項は、いずれも現実的であり、日本が協力すべき側面も多々ある。また、東シナ海の航行の自由や、拉致被害者を示唆する北朝鮮による人権侵害等、日本にとっての重要な安全保障問題にも触れてあり、有難い法律と言えよう。
 

  
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