外国人留学生の4割を占める中国人。東京大学大学院総合文化研究科准教授の阿古智子さんは、日本への留学理由と、留学後の就職や出国、帰国などの選択肢が多様化していると指摘する。国が「留学生30万人計画」を掲げる中、受け入れ現場の負担に配慮が必要だと訴える。
留学の入り口も出口も多様化
中国人の日本への留学の入り口、つまり留学のきっかけと、出口、留学後の就職先や進学先などが多様化していると感じる。苦学生が主だった時代に比べ、家庭環境が良くなり、奨学金がなくとも留学できるようになっている。もともと、日本に来るのは、英語圏に比べて若干特殊な層――アニメファンなど日本がもともと好きな層――が多かった。しかし、今は英語で授業の受けられる大学が増え、日本ファンほど日本に関心がなくても留学できるようになってきた。
卒業して日本で就職する学生もいれば、違う国の大学院に進む学生もいる。卒業後、さまざまなところで活躍できる人が増えてきたと感じる。
日本語で教えるということも重要だが、日本語を学ぶ学生はそれほど多くない現実がある。日本としても、中国の中で影響力を持つ人材を育てたいわけだから、日本語を勉強する人だけを留学のターゲットにしていては、多様で優秀な人材を惹きつけることはできない。だから、日本の中で、英語で授業をするところをもっと増やすべきだろう。
留学した後、中国に戻る、あるいは第三国に出ていく人がいる。これを日本に来た人材が流出したとみる見方もあれば、一定期間日本にいた経験を生かして国際的に働いてくれるのならいいではないかと前向きに評価する見方もあるだろう。私はどちらかというと後者の見方をしていて、日本で囲い込む必要はないと考えている。日本で学んだ知識や人脈を使って何かしてもらえるなら、日本がステップストーン(飛び石)になってもいいのではないか。