この出来事が極細糸を追求するきっかけとなり、35歳で父親の後を継いで社長に就任した福田さんは福田織物として会社を設立。ハンカチの糸よりもさらに細い番手の糸を開発して、国内外の有名ブランドの生地を手掛けるようになり、平成25年、自社ブランドで「光透けるストール」を発売する。
髪の毛より細い糸で遠州から世界一に
工場を見学させてもらうと、何台も並んだ織機が忙(せわ)しなく音を立てて糸を織っている。
驚くのは糸の細さ。まるで素麺、いや、ぜんぜん細い。一般的な綿のシャツやストールの生地に使われる糸は40番手だが、髪の毛よりも細い120番手の糸を、1本のままで織っている。織り上がったストールの重さはわずか45グラム。なんと卵より軽い。まさに世界一の技術といっていい。
「若い社員たちと伝統の遠州の織物の技術で世界一を目指して、もう一度産地の力を取り戻すのが私の夢です」と語る福田社長。
今回モデルにもなってくれた、福田織物でアパレル部門のデザインを担当している岡島晴奈さんと小林みのりさんに、おしゃれなストールの巻き方を教えてもらいました。
まず2つに軽く折って巻いて、できた輪に片方だけ端を入れる。そして、2つに垂れている長い方に短い方を軽く結びます。ポイントは、ぎゅっと巻いてネジネジさせたりなどせず、ふんわりと軽~く。
さっそくイタリアのオヤジよろしく光透けるストールを巻いてみた。寒くはないかい。え、よけいなお世話だって? トホホ。
(写真・阿部吉泰)
●有限会社福田織物
<所在地>静岡県掛川市浜川新田771
☎0537-72-2517
<URL>http://fukudaorimono.jp
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