2024年11月25日(月)

メイドインニッポン漫遊録 「ひととき」より

2019年4月26日

 この出来事が極細糸を追求するきっかけとなり、35歳で父親の後を継いで社長に就任した福田さんは福田織物として会社を設立。ハンカチの糸よりもさらに細い番手の糸を開発して、国内外の有名ブランドの生地を手掛けるようになり、平成25年、自社ブランドで「光透けるストール」を発売する。

髪の毛より細い糸で遠州から世界一に

 工場を見学させてもらうと、何台も並んだ織機が忙(せわ)しなく音を立てて糸を織っている。

(写真左)希少な新疆綿〈しんきょうめん〉を使用した光透けるストールの120番手の糸用の糸巻。番手とは糸の太さの単位で、綿の糸は番手が大きくなればなるほど細い
(写真右)糸が切れない絶妙な織機の力加減には職人の技がいる

 驚くのは糸の細さ。まるで素麺、いや、ぜんぜん細い。一般的な綿のシャツやストールの生地に使われる糸は40番手だが、髪の毛よりも細い120番手の糸を、1本のままで織っている。織り上がったストールの重さはわずか45グラム。なんと卵より軽い。まさに世界一の技術といっていい。

遠州伝統の織物技術を受け継いでもらおうと若い世代を率先して採用。最近はブランドの知名度も高くなり他県からの志願者も多い

 「若い社員たちと伝統の遠州の織物の技術で世界一を目指して、もう一度産地の力を取り戻すのが私の夢です」と語る福田社長。

 今回モデルにもなってくれた、福田織物でアパレル部門のデザインを担当している岡島晴奈さんと小林みのりさんに、おしゃれなストールの巻き方を教えてもらいました。

 まず2つに軽く折って巻いて、できた輪に片方だけ端を入れる。そして、2つに垂れている長い方に短い方を軽く結びます。ポイントは、ぎゅっと巻いてネジネジさせたりなどせず、ふんわりと軽~く。

 さっそくイタリアのオヤジよろしく光透けるストールを巻いてみた。寒くはないかい。え、よけいなお世話だって? トホホ。

掛川市散策
(写真上・左、中央)掛川花鳥園。園内にはエミューやインコのほかハシビロコウやオウムなどの鳥や花々がいっぱい! ☎0537-62-6363
(写真上右)いちご摘み、赤ずきんちゃんのおもしろ農園は年中無休。いちごは紅ほっぺや章姫、季節にはメロンやスイカもある ☎0537-48-4158 
(写真下左)福田さんが通っていた高校がある横須賀地区の古い町並みを歩いていると、下校途中の小学生たちに遭遇
(写真下右)掛川城の大手門近くにあるお菓子とおでんの店・すいのや。子供の時分は駄菓子を買って、大人になったら昼間から一杯という地元の人でにぎわう ☎0537-22-7432

(写真・阿部吉泰)

●有限会社福田織物
<所在地>静岡県掛川市浜川新田771
☎0537-72-2517
<URL>http://fukudaorimono.jp

  
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◆「ひととき」2019年4月号より

 

 

 

 


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