あからさまな対サウジアラビア傾倒政策
このほか、トランプ・ホワイトハウスが打ち出してきた、あからさまな対サウジアラビア傾倒政策の一環として、以下のような事例が指摘されている。
- 2017年、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)両国が対カタール経済封鎖に乗り出し「湾岸協力会議」(GCC)危機に発展した際、トランプ大統領はティラーソン国務、マティス国防両長官(いずれも当時)が戦略的拠点としての在カタール米軍部隊の重要性に照らし反対したにもかかわらず、唐突にもサウジ支持の立場を表明。また、同じころ、サウジ、UAE両国がトランプ大統領に対し、ティラーソン長官解任を迫ったことを示すメールが暴露され、実際に同長官は翌2018年3月に解任された。
- イランが後押しするイスラム教シーア派勢力と、スンニ派のサウジアラビアが主導する部隊との間で争われてきたイエメン内戦で、トランプ政権は米議会の反対を無視してサウジ連合軍への一方的支持を表明してきた。米議会では超党派的見地から、アメリカの軍事援助中止を求める決議案を採択したものの、大統領が拒否権を行使、サウジアラビア側にに徹底して与する姿勢を崩していない。
- トランプ大統領は2017年5月、サウジアラビアのサルマン・サウド国王を訪問、両国首脳会談で米国製戦車、軍用艦、ミサイル防衛システムなど1100億ドル相当の武器売却覚書に署名した。この大規模な対サウジ軍事取引は、中東地域における対イラン軍事ランス維持が目的、と説明されている。
- ニューヨーク・タイムズ紙は2018年11月、ホワイトハウスがサウジアラビアに対し、600億ドル規模の原発を売却する内容を盛り込んだ「枠組み合意」を取りまとめたと報じた。ただ、サウジ側は必要な核燃料については「自国生産」にこだわっていることから、将来的に核爆弾転用を視野に入れている、との国際的懸念も広がっている。
こうした点を踏まえ、米議会の民主党議員の間では、モラー特別検察官による「ロシア疑惑」捜査完了後も、今度はサウジアラビアとトランプ政権との特殊な関係について徹底調査を求める声が高まっている。
その中でも最近、脚光を浴び始めているのが、下院情報活動委員会の動きだ。アダム・シフ委員長はテレビ局とのインタビューで「ロシアであれ、サウジアラビアであれ、トランプ政権に対し影響力を行使してきた国の関係者を議会で喚問し、真相を解明することは党派を超え国民にとっての重要案件である」と言明している。
ネット・メディア「Daily Beast」によると、同委員長は調査機能を強化するため先月、FBIの前金融犯罪部長パトリック・ファーロン氏を専門上級スタッフとして登用、サウジアラビア・コネクションに本腰でメスを入れていく構えだ。
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