2023年1月31日(火)

Washington Files

2019年6月24日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 アメリカの社会インフラについては、権威ある監視団体として知られる「全米土木工学協会」(American Society of Civil Engineers=略称ASCE)が、全米各地の実情を「A」から最悪の「E」まで5ランクに分けて4年ごとに審査した詳細にわたる「インフラ評価カード」を作成、一般公開している。

「普通=C」以下というみじめな状況

 最新の2017年度版によると、総体としての評価は「不良」の「Dプラス」となっており、前回2013年時の評価と同様の結果だった。つまり、「普通=C」以下というみじめな状況下にあることを裏付けている。

 さらにこれを部門別にみると、「道路=D」、「交通機関=Dマイナス」、「港湾=Cプラス」、「公園=Dプラス」、「公立学校=Dプラス」、「飲料水=D」、「排水処理=Dプラス」、「空港=D」、「橋=Cプラス」、「ダム=D」、「有毒廃棄物処理=Dプラス」などとなっており、この中で、全米61万カ所に架かる橋のうち、20万カ所の橋が50年以上前に建設されており、修理に要する費用は最低1230億ドルと推定されている。

 空港についても「評価カード」は「乗客処理、航空管制システム含め、早急に刷新の必要に迫られており、全米主要空港30カ所のうち、24カ所は毎週1日はサンクスギビング・ホリデーのピーク時のような大混雑をまもなく経験することになる」と警告している。

 いずれにしても、「港湾」「橋」以外のあらゆるインフラが「Dランク」のレッテルを貼られるという深刻な状態にあることは否定できず、ASCEの試算によると、今後、アメリカ全体のインフラ整備・改善のためには、2025年までに4兆5000万ドルの支出が必要だという。

 こうした事情から、「インフラ整備」は政府、連邦議会にとって、国民の期待に応える意味でも最重要課題のひとつであり、民主、共和両党とも党派を超え、政権が入れ換わるたびごとに、新しい施政方針の中に盛り込まれてきた。

 それにもかかわらず、これまで歴代政権が大規模なインフラ投資計画の実施に踏み切れなかった背景には(1)国家予算(2019年度予算は4兆7000億ドル)にも匹敵する莫大な支出を必要とし、財政赤字を一段と拡大させることになる(2)「小さな政府」と「自助精神」を礼賛する保守派議員や政治組織の根強い抵抗がある(3)資金ねん出の手段として増税に踏み切った場合、選挙の際に不利になる(4)計画推進に際し、各州間で事業着手の優先順位をめぐり激烈な競争となり、政界を巻き込んだ混乱の要因にもなりかねない――などの懸念材料があるからだ。

 トランプ大統領の場合、政権発足以来、インフラ予算をスムーズに通過させるための民主党議会指導者との協議は今回で3度目であり、前2回の協議の際は、銃規制法案、移民政策改革などの「懸案優先」を理由に、インフラ問題の実質協議は先送りにされてきた経緯がある。


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