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2019年6月26日

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風樹茂 (かざき・しげる)

作家、国際コンサルタント

作家、国際コンサルタント(kazakishigeru@gmail.com)。1956年、北海道生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。メキシコ留学後、中南米の専門商社を経て、南米アマゾンの奥地でODAプロジェクトの鉄道建設にかかわる。その後は、シンクタンク、研究所勤務などで、首相向けの政策提言、ODA援助、海外投資、NGOプロジェクトに従事。イスラム開発銀行のコンサルタントも経験し、30数カ国を踏査。石油関連事業でカタール、ベネズエラに駐在。

海外援助の退潮

 外務省の援助部門に応募したのは、もうひとつ理由がある。援助の現状を知りたかったのである。かつてバブル華やかな頃は、外務官僚は海外援助にかかわる部門にいなければ出世できないといわれていた。ODA予算は1兆円もあった。

 私はそれに反発し、海外援助関係者であったにもかかわらず拙著『ホームレス入門』(2001年)で「1兆円もの海外援助をしているこの国は、外見が大事とばかりに破産した肉親は見向きもせずに、町内会一の寄付金を贈与する馬鹿一家のようである」と書いている。 

 ところが今ODA予算は半分の5000億円ほど。JICAは予算不足や内部の管理不全から一時コンサルタント企業への支払いの遅配や案件の取り消しさえあった。私が参加していた歴史ある専門家集団「国際開発アソシエイツ」は、JICAに以前の支払い分を遡及して返済を求められて倒産してしまった。まことに残念!

 一方、その反面伸びたのは防衛費だ。武器商人と化したトランプ大統領のおかげもあり、平成24年度の約4兆7000億円を底に、直近では5年連続で過去最高を更新し5兆2574億円となっている。

 かつて日本は途上国では援助に力を入れる平和国家として認知されていた。日本が援助をしている国は、日本の認知度は高いし、居心地がよい。たとえばボリビアのサンタクルスなどでは、小さなホテルでさえ、NHKを視聴できる(普通は小さなホテルではせいぜい中国語番組が聴取できるだけだ)。

 ところが今、過去を知る途上国の年配の人は日本の軍艦を見て「いよいよ日本が来たな」というのである。すなわち、日本の国柄がすでに変わってしまったのだ。

 防衛費がある程度上がるのは理解できるとしても、現状でODAの予算は多分少なすぎる。それを内部で見極めてみたかった。

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