2024年12月9日(月)

日本を味わう!駅弁風土記

2012年2月6日

九州北部の郷土料理「かしわめし」は、
大正時代から各地で駅弁にもなってきた。
福岡・折尾駅のかしわめしは、
旅行客や地元民にも深く親しまれる秘伝の味である。

 折尾駅の「かしわめし」は、名物の駅弁である。しかしこのフレーズは、地元の方と駅弁ファンと一部の鉄道ファンを除き、すぐにはなかなか理解してもらえない。まず、折尾駅はどこかと聞かれる。福岡県で小倉駅と博多駅の間だよ、と言えば、だいたい分かってもらえる。次に、かしわめしとは何かと聞かれる。九州の北部ではニワトリのことをカシワと呼び、つまりかしわめしとは鶏飯のことだよ、と言えば大丈夫である。ここでようやく、九州以外の地区の人々にも理解してもらえる。

 かしわめしは、駅弁になる前から、九州北部やその周辺で親しまれてきた郷土料理である。お祝いの時に鶏をつぶして飯に炊き込んで振る舞ったものだというし、今でも地元の惣菜屋であればメニューに載せている。駅弁でも、島根県の津和野駅や山口県の新山口駅から、小倉駅や折尾駅を経て佐賀県の鳥栖駅まで、ほぼ同じ見栄えで並ぶ。

かしわめし 東筑軒 650円

 鶏ガラスープや醤油などで炊いた茶色い御飯の上に、錦糸卵、鶏肉のそぼろやフレーク、刻み海苔でストライプを描く。これが「かしわめし」本来の姿であり、駅弁でも特別ではない。飯の分量やおかずの差異により、ひとつの駅で数種類のかしわめし駅弁が売られることがある。折尾駅でも駅売りの弁当だけで、650円、750円、1,000円と3種類を数える。

 1921(大正10)年から売られる折尾駅弁の「かしわめし」は、過去の文献でかしわめしの駅弁として、あるいは全国の鶏飯駅弁の中でも、最もうまいと紹介されることが多い。関東在住の私も10回は食べた。そして、うまかった。

全国の「かしわめし」駅弁の中でも屈指のうまさ

 茶色い御飯が、冷めているのに「もちっ」としている。水気は少ないのに、柔らかい。九州北部らしく砂糖の甘さが強めな味付けの中に、鶏のダシが豊かに効いている気がする。ツナ缶並みにしっかりした形がある鶏肉のフレークは、甘辛な味付けが御飯より強めで、単独で食べると少々きついが、御飯に合わせると滋味が広がる。これだけでは味が同系になるのだが、隣の海苔と卵がまた別の香りを出すから、味覚に変化が出る。


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