2022年8月18日(木)

WEDGE REPORT

2019年8月28日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

クリミア併合は主権・領土の一体性侵害

 ロシア排除のきっかけとなったクリミア併合は、ロシアが帝政時代、ソ連時代からの領土的野心をなお抱いていることをはっきりと示した事件だった。

 2014年春、ウクライナの親ロシア政権が崩壊、親欧米派政権が登場したことで、クリミアの一部住民が抗議。ロシア軍が進攻するなかで、クリミア共和国に親ロシア政府が樹立され、ロシアへの編入が決定された。その是非を問う住民投票は不明朗な形で行われたが、ロシアは3月、ウクライナの反発を押し切っての編入を宣言した。  

 西側諸国や国連、欧州などは、ウクライナなどの主権・領土一体性を保障した1994年のブダペスト覚書(署名、米英ロ)違反ーとして激しく非難。関与したロシア企業、個人の資産凍結、取引停止などの制裁を科した。

 この年のG8サミットは6月、ロシアのソチでプーチン大統領を議長に開かれる予定だったが、各国はこれをボイコット、6月にブリュッセルで7カ国による会合を開いた。当時、ロシアのラブロフ外相は、「G8は非公式な組織で会員証を出しているわけではない。それがなくなればどうなるか、1、2年みてみるのもいい」と皮肉交じりで強弁した。

 一方、日本にとっての北方領土問題の経緯はいまさら繰り返す必要はなかろう。

 第2次大戦の末期、旧ソ連は日ソ中立条約を一方的に破棄して旧満州に攻め込み、8月15日の終戦後、どさくさに紛れて、日本固有の領土である北方4島に武力で侵攻。以来不法占拠を続けている。第2次大戦の終結に当たって、戦勝国による領土拡張の意図を否定したカイロ宣言に明確に違反する。

日本、ウクライナは不法行為の被害者

 ロシアの不法行為によって国益が踏みにじられていることでは、ウクライナ、日本とも共通していることが理解できよう。

 ウクライナのハルチェンコ駐日大使は今年3月、東京・日本記者クラブで会見した際、ロシアの行動を非難したうえで、北方領土問題について、「日本は熱心に外交交渉している。グッドラック」とエールを送った。

 さて、日本はどうする。

 ロシア復帰に反対すれば、トランプ、プーチン両大統領と安倍首相の個人的な友好関係にひびが入り、北方領土交渉に悪影響が出るかもしれないと懸念する向きもあるだろう。

 賛成すれば、こうした事態は避けられるが、欧州各国からは、クリミア問題軽視という非難を浴び、ひいては北方領土問題への対応を疑問視されかねない。長期的な視点に立てば、領土問題解決に向けてプラスにはならないだろう。

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