2024年11月27日(水)

WEDGE REPORT

2019年9月30日

国務長官になりそこねた男の影の工作

 ニューヨーク・タイムズ紙など米メディアによると、今回の疑惑はトランプ大統領とゼレンスキー大統領による電話会談でいきなり降ってわいたのではなく、その根は相当深い。印象的なのは、大統領の個人弁護士であるジュリアーニ氏の行動が目立つ点だ。

 トランプ氏が敵視するバイデン氏は、クリントン政権の副大統領時代、息子のハンター氏が役員をしていたウクライナのガス企業の不正を調べていた元検事総長の解任に関わった、とトランプ大統領から非難されている。ジュリアーニ氏は1月ニューヨークで、ウクライナのルツセンコ検事総長と会った。この件の捜査を続けるよう検事総長に求めたと見られている。2人はその後、ワルシャワでも会談している。

 ジュリアーニ氏は2004年から、コンサルタント事業などウクライナでのビジネスに手を染めてきた。トランプ政権発足の際、国務長官に就任することを強く望んでいたが、外国との事業関係が深いことから、外交を担当する国務長官候補から外されたいきさつがある。3月に終了したロシアゲート捜査でも、大統領を擁護し、大統領の主張を代弁してきたが、今回もウクライナ疑惑の中心人物として、その暗躍ぶりが浮き彫りになっている。

 ウクライナでは4月の選挙で、大統領がポロシェンコ氏からゼレンスキー氏に交代。ゼレスンキー新大統領が米国からの軍事援助問題もあり、トランプ氏との早期の会談を求めていた。しかし、同紙によると、ゼレスンキー政権は5月ごろまでに、会談が実現するかどうかは米国の求める政治捜査に“協力する”かどうかにかかっている、と結論付けていた。

 こうした政治判断に至った理由は必ずしもはっきりしないが、5月20日に行われたゼレンスキー大統領の就任式に出席した米代表団がトランプ大統領の意向を伝達した可能性もある。団長には当初、ペンス副大統領が予定されていたが、トランプ大統領が急きょ、ペリー・エネルギー長官に差し替えた。この団長交代にはトランプ氏の政治的な思惑が働いていると見られている。

 同じころ国務省などでは、ジュリアーニ氏が正規の外交ルートを迂回してウクライナ指導部と秘密接触していることに懸念が広がっていた。9月に解任された対ロ強硬派のボルトン補佐官(国家安全保障担当、当時)もジュリアーニ氏の行動に怒っていた1人だ。ジュリアーニ氏がロシアとの融和をウクライナ側に働き掛けることを恐れていたためのようだ。

 ゼレンスキー大統領は就任式後、米側の意向を探るため、側近のアンドリ・イェルマク氏をワシントンに派遣した。この時ジュリアーニ氏はボルカー特別代表の仲介で、イェルマク氏と電話で話し合った。


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