2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年10月30日

 アフガンの将来にとってタリバンは欠かせない存在である。米国はアフガンからの撤退を視野にタリバンと和平協議を行っている。タリバンはテロ組織であるとともに政治組織でもある。1996年から2001年まではアフガニスタンを統治した。現在でもアフガンで有力な政治勢力となっている。

 そのタリバンとアルカイダとの関係につき、大西洋評議会の上級フェローのJavid Ahmadと米ハドソン研究所理事のHusain Haqqaniは、10月7日付けForeign Policyウェブサイト掲載の論説で、タリバンは依然としてアルカイダと関係があって、タリバンと米国との和平協議の足を引っ張っており、米国はタリバンにアルカイダとの関係を絶つよう要求すべきである、と述べている。論説は、以下の諸点を指摘する。

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・タリバンが、米国との交渉(現在は凍結中)で長年のパートナーのアルカイダとの関係を絶つと約束したことの信憑性は疑わしい。

・タリバンとアルカイダの関係は、ほぼ23年続いている。タリバンは現在アルカイダのアフガン支部や他のほぼすべてのテログループの主要なパートナーとなっている。

・約300人のアルカイダの戦闘員がタリバンの部隊に属し、米国を標的にしている。アルカイダはタリバンに爆発物の作り方、特殊工作の計画、洗練された攻撃などを教え、タリバンを訓練している。

・アルカイダがタリバンの部隊にいることが、タリバンの穏健派と強硬派の対立の重要な要素になっている。強硬派は戦争を終わらせる政治的解決に関心が無いようである。彼らは米タリバン協議中を含め、交渉に臨む政府の政治的指導力を弱めるため攻撃を行ってきた。タリバンの穏健な指導者は不利な立場に立たされており、強硬派の反対に直面してアルカイダとの関係を切ることができないかもしれない。

 タリバンとアルカイダとの関係は、米タリバン交渉において大変厄介な問題である。タリバンは公にはアルカイダの政策を支持していないし、アフガンで反乱分子と戦うのにアルカイダを必要としていないかもしれない。タリバンの今の指導者は、アルカイダとの同盟を公には表明していない。しかし、特にタリバンの中の強硬派がアルカイダと緊密な関係を持っているようである。強硬派はタリバンにとって厄介な存在である。強硬派は米国との和平協議に反対で、交渉に臨む政府の政治的指導力を弱めようとしている。

 米国とタリバンの和平交渉中、タリバンによるテロ攻撃が何度となく行われている。タリバンが、その総意として米国に揺さぶりをかけるためにテロ攻撃をしていたというよりも、強硬派の独走であった可能性がある。

 米国は和平協議でタリバンにアルカイダとの関係を切るよう要求しているが、タリバンは強硬派の存在もあってなかなかアルカイダとの関係を切れないでいる。強硬派が和平協議に反対しているので、和平協議の見通しは立てにくい。

 米国としては、タリバンにアルカイダとの関係を断つよう要求すべきであろうが、両者の密接な関係を考えれば、タリバンが要求に応じることは容易でないだろう。タリバンの穏健派指導者が、戦闘員に対して、アルカイダとの共同作戦をすべてやめ、安全な避難場所を閉鎖するよう明確な指令を出すことも容易でないだろう。タリバン内の対話を通じて強硬派の説得に努めることも困難だろう。

 その間にあって、米国は、アフガンの治安部隊の指導、育成とアフガンにおける反テロ活動は続ける必要がある。2001年、米国が同時多発テロ事件を受けてアフガン内のアルカイダを撲滅するためアフガン戦争を始めてから20年近くがたつが、米国のアフガンに対する関与は、まだ当分の間続かざるを得ないであろう。

  
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