定年バックパッカー海外放浪記

2020年2月2日

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(2019.4.23~5/22 30days 総費用9万7000円〈航空券含む〉

 2019年の4月に諸々の雑事が片付いて6カ月ぶりに海外放浪を再開できることになった。前年の2018年の放浪旅は3度とも途中で頓挫断念している。

 2017年11月~2018年1月のオーストラリア自転車キャンプ旅行は原因不明の歯痛のため10日ほど日程を早めて緊急帰国。次の2018年2月からの欧州縦断自転車旅行(ギリシア~ポーランド)は義父の突然の訃報のため3月にクロアチアのザグレブから緊急帰国。

 その次の英国・アイルランド自転車キャンプ旅行は、初日にロンドン郊外で不良少年グループに現金の一部とクレジットカードをカツアゲされて頓挫。やむなく1カ月半のロンドン見物に変更。

 ここまで不運(bad luck)が続くと気弱になる。安全・安心・安楽で気候も温暖な国でまったりと放浪旅をしたいと考えた。

 世界地図を広げてあれこれ思案した結果、自転車周遊道路が整備されている台湾自転車旅行がベストと判断。飛び切りの親日国家で治安が良く、しかも美味しい台湾料理と三拍子揃っている。

南国情緒爛漫。東部海岸北回帰線付近

ひなびた漁港の公民館

 5月2日午前8時。鹿港を出発して台湾東海岸をひたすら南下。強烈な逆風と雨模様で気持ちが折れそうになったが、午後4時過ぎ布袋漁港に到着。町に一軒だけの宿屋は日本円換算で1泊4500円と高い。キャンプサイトを探して30分ほど徘徊。

 公民館の庭にテーブルとベンチが数組ならんでいた。アクリル板の屋根まであったので雨でも問題ない。公民館の管理人に趣旨を話すと快諾。

 夕方になると公民館でカラオケをしていたグループが散会して三々五々と出てきた。最初に80歳の大柄なお爺さんが話しかけてきた。長年柔道のコーチをしてきたという。道場に何度も日本人の柔道師範を招いて教えを受けてきたという親日家だ。近くでバナナを買って来て差し入れてくれた。

日本語サークルの愉快な仲間たち

布袋漁港の日本語サークルの愉快な面々とオジサン

 そのうちに女性が出てきて柯麗美と名乗った。彼女は日本語サークルのメンバーで、日本語の先生が当日は東京で街歩きを楽しんでいるとフェイスブックを見せてくれた。スマホで日本語の先生を呼び出してテレビ電話。彼は東京下町の谷中で居酒屋めぐりをしており、居酒屋から実況中継。

 その合間に仲間の青年がジュース、コーラ、お菓子を買ってきて差し入れてくれた。さらに日本語サークルの数人の女性が参加して中国語と片言の日本語で盛り上がった。

 彼らが引き揚げて時計を見ると9時を過ぎていた。

深夜の招かざる客

 夜半から本格的な嵐となってきたが、公民館の屋根で風雨を防げるので安心して寝ていた。深更に不自然な物音で目が覚めた。人がテントの近くで何かゴソゴソしている気配。一気に全身が緊張。時計は午前2時。

 テントの通風孔から覗くと、荷物を満載した自転車を停めて、うごめいている人影が。ビニールシートを敷いて屋根の下に寝床を造っているようだ。野宿していたホームレスが避難してきたのであろう。危害を加える心配はないと判断して再び寝袋にもぐり込んだ。

再びの“おもてなし”

 翌朝7時半頃、柯さんが日本語サークルのメンバーと二人でやってきた。朝食としてサンドイッチ、ミルクコーヒー、リンゴを持って来た。みんなで朝食を食べながら賑やかに日本語の練習。

 昨夜のホームレスはビニールシートにくるまって寝ていた。柯さんによると台湾ではホームレスは“遊民(ヨウミン)”と呼ばれているよし。オジサンが冗談に中国語で「私は日本の遊民です」と言ったら二人は爆笑。

 夏目漱石の小説に“高等遊民”という言葉があったことを思い出した。

貴方は日本人ですか?

 台湾旅行中に地元の人達と会話する度にいつも同じパターンのリアクションが繰り返されることに気付いた。

 オジサンが「ニーハオ」と声を掛けると、自転車に荷物を満載した身なりのよくない中高年に対して若干の警戒心を示す。

 簡単な会話を交わすうちに、先方はオジサンがどうも外国人らしいと気付いてオジサンに興味を示す。そして「どこの国から来たか」「日本人ですか」と質問をする。

 オジサンが「日本から来ました。日本人です。」と回答すると、途端に先方は相好を崩して大喜び。待っていましたばかりに会話が弾む。年寄りだと「コンニチワ」「元気ですか」など覚えている限りの日本語が出てくる。

 何度も同様の経験をして次第に台湾の庶民の心情が分かってきた。中国人観光客は最近減少傾向にあるが、それでも日本人観光客よりも断然に多い。中国人観光客は商売としては歓迎するが心情的には好きになれない。また韓国人観光客も来るがあまり親しみを感じない。

 それで自転車に乗ったオジサンが“どこの国の人間か”まず確認したいということらしい。「日本人ですか」と質問する場合には“日本人であろう”と推測して、“日本人であってほしい”と期待して尋ねるようだ。それでオジサンが「日本人です。自転車で台湾を一周しています。」と回答すると大歓迎されるという図式だ。

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