2022年11月27日(日)

WEDGE REPORT

2020年4月26日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

大統領の夢は「ノーベル平和賞」

 不可解なのは、トランプ大統領が4月18日の記者会見で、「正恩氏からすばらしい書簡を受け取った」と明らかにしたことだ。北朝鮮外務省は即座にこれを否定、米国務省も「未確認」としているという。

 大統領のことば通りなら手術後にトランプ氏に書簡を送ったことになるが、「デイリーNK ジャパン」は、アメリカが金正恩委員長の異変を察知したうえで揚げた〝観測気球〟の可能性があると推測。一方で大統領が過去の書簡の話を持ち出しただけかもしれないとしている。

 米国の専門家の一人は、「大統領によるフェイク・ニュースだろう」と手厳しい見方をとる。

 この専門家によると、大統領はすでに米朝対話への関心と興味を失っているという。金委員長の回復を期待すると述べ、対話路線継続をめざす姿勢を見せているのは、すべて秋の大統領選挙を見据えてのことだ。

 再選を実現することと、正恩氏との対話を実現した実績によるノーベル平和賞受賞がトランプ大統領の夢だという。日本の安倍首相に推薦人になってもらったのもそのためだ。しかし、「ノーベル賞を逃したいま、大統領選のために、北朝鮮との対話を進めるポーズをとることだけが必要になった」(朝鮮問題専門家)というわけだ。 

軍による強硬路線が復活か

 金正恩委員長が今後、元気な姿を見せたとしても対米関係の構図の変化に直面するかもしれない。

  アメリカ国内では、正恩氏が健在であっても、数年以内に健康状態が著しく悪化する可能性があるとみる専門家が少なくない。氏の指導力、影響力が薄れ、軍の力がいっそう強化され、「先軍政治」が復活、強硬路線が復活する可能性が高いという。

 北朝鮮では現在、正恩が死亡などによって統治できなくなった場合に備えて、妹の金与正氏に「権限代行」させる準備が進んでいる。昨年末、平壌で開かれた党中央委員会総会で、そうした場合には「権限を与正氏に集中する」との内部決定が行われたとの報道(4月22日付読売新聞)もある。

 ただ、それが現実になっても、与正氏は「象徴」にすぎず、実権は軍がもつことになるのではないか(米国の専門家)との見方がもっぱらだ。

 金正恩委員長の健康状態がどうあれ、米朝の対話路線は勢いを失い、両国関係はあらたな段階に移行する可能性が強い。

  
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