海野素央の Love Trumps Hate

2020年5月22日

»著者プロフィール
著者
閉じる

海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

オバマへの責任転嫁

 トランプ大統領は5月14日に放送された保守系の米FOXニュースとのインタビューで、連邦政府から武漢ウイルス研究所への資金援助に関して、「オバマ・バイデンは腐敗していた。オバマ政権は2014年に何百万ドルも資金を提供した。私はそれを止めた」と回答しました。

 トランプ大統領は、ワシントンの腐敗した政権や人物を「沼(スワンプ)」と呼んでいます。バラク・オバマ前大統領は「沼」であり、自分が武漢ウイルス研究所への資金援助を中止して、「沼の水を抜いた(腐敗を取り除いた)」と言いたかったのでしょう。

 トランプ大統領は同政権と武漢ウイルス研究所の関係を切り離し、オバマ前政権と同研究所を結びつけて、新型コロナ感染の責任を転嫁しました。新型コロナ感染の問題を「オバマの失敗」にすり替えたのです。

 加えて、トランプ氏はオバマ前政権が米国民の税金を使って武漢ウイルス研究所に資金援助を出したのにもかかわらず、米国内に新型コロナ感染が拡大して大きな代償を支払ったと主張し、彼らの怒りをオバマ氏に向けることも可能です。

 つまり、トランプ大統領はオバマ前政権で税金が米国の国益に反する形で使用されたと議論できる訳です。一言で言えば、オバマ前大統領は「米国第一主義」ではないとアピールできます。

 これに対して米メディアは、武漢ウイルス研究所への資金援助は370万ドルではなく、実際は約60万ドル(約6500万円)だったと報じています。しかも、トランプ政権は19年7月、エコヘルス・アライアンスに新たに5年間の資金援助の更新を承認したというのです。オバマ政権のみの責任であると言い切ることは到底できません。

関連記事

新着記事

»もっと見る