2024年4月26日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年5月22日

トランプの嫌悪感と恨み

 トランプ大統領の「オバマ攻撃」と「中国攻撃」はますます過激になってきました。上で紹介した米FOXニュースとのインタビューで、トランプ氏は1月15日にワシントンで「第1段」の米中貿易合意に著名をした際、新型コロナウイルスについて協議しなかったと明かしました。しかし、このとき中国ではすでに新型コロナウイルス感染拡大が始まっていました。

 民主党支持者はこれに関して、トランプ大統領が貿易のみに関心があるからだと批判しています。一方、トランプ氏は中国が新型コロナについて情報を隠蔽して共有しなかったと反論し、強い不満を漏らしています。おそらく、トランプ大統領は内心中国に騙された思っているでしょう。

 トランプ大統領は5月18日、ホワイトハウスの記者団に対して「オバマは無能の大統領だった。史上最悪の大統領だ。とんでもない仕事をした」と激しく批判したうえで、「オバマ政権時代は米国社会はひどい分断をしていた」と強調しました。

 透かさず記者団が、「今も米国社会は分断していませんか」と質問をしました。すると、トランプ大統領は直接質問に答えずに、厳しい表情を浮かべて「感染が拡大する前は、米国社会は成功していた」と回答しました。続けて、自ら景気後退の理由に触れ「中国が素晴らしい『贈り物』を送ったからだ」と語気を強めました。もちろん、贈り物とは新型コロナを指しています。

 この会話の流れに注目です。トランプ大統領には中国に対する怒りと恨みがあることがはっきり読み取れます。

 中国からの贈り物はトランプ陣営の選挙戦略にも多大な影響を与えています。支持者を集めた大規模集会を開催できないのみではありません。

 16年米大統領選挙で、トランプ大統領は「米国を再び偉大にする」をスローガンに掲げて勝利を収めました。20年大統領選挙では米国は復活し、世界から尊敬されるようになったという意味を込めて、「米国を偉大なままに」を新スローガンにして訴えてきました。トランプ集会に参加すると、このスローガンが印刷された赤い帽子を被った熱狂的な支持者を多く見かけます。

 ところが、中国からの「贈り物」により、景気が一気に落ち込んだので、新スローガンを選挙運動で使用するのが困難になりました。「米国を偉大なままに」から「米国を再び偉大にする」へ後戻りです。これはトランプ大統領にとって痛手です。

 トランプ大統領は習近平国家主席と「今は話したくない」とも述べました。オバマ前大統領に加えて、トランプ氏は中国に対しても強い嫌悪感や恨みを抱くようになりました。

  
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