コロナ自粛に終止符、真っ向非難
バイデン氏は2日、コロナ禍のため東部デラウエア州ウィルミントンの自宅にこもっていた自粛を打ち切り、選対本部のあるフィラデルフィアで国民に向け演説、大統領が自分の利益だけを考え、国民の分断を煽っているなどと強く非難した。この2カ月、地下室のスタジオからオンライン発信を続けてきたが、抗議デモの嵐が吹き荒れる今こそ、仕掛ける時だと判断した模様だ。
同氏はトランプ大統領が教会で写真を撮るために、デモ参加者を催涙ガスと閃光弾で追い払ったと指摘。国民の必要性よりも、自らの支持者の感情に資することや、権力により関心があるようだと述べ、支持者優先のトランプ氏の姿勢を厳しく糾弾した。
その上でバイデン氏は「大統領職というのは大変な職務であり、誰であってもいつもうまくいくとは限らない」と述べる一方、「しかし、私は恐怖と分断を弄ばない。憎悪の炎を煽らない。この国に影を落としてきた人種問題を解消することを目指す」と訴えた。
同氏は先月25日の戦没将兵記念日に慰霊碑に献花するため2カ月ぶりに外出、同31日にはウィルミントンの暴動現場を視察、続いて黒人指導者らと会談、抗議行動のきっかけとなった死亡した黒人の家族にも電話するなど、コロナ自粛から表舞台に復帰する機会をうかがっていた。
バイデン陣営は、7月には女性の副大統領候補を確定し、「国民の融和」を掲げて、選挙戦を優位に戦いたい考えだ。だが、バイデン氏は77歳と高齢で、コロナウイルスに感染すれば、選挙運動に壊滅的な打撃になりかねない。
専門家の1人は「彼がウイルスに感染でもすれば情勢は一気に変わる。だが、いつまでも “隠とん生活”を続けるわけにはいかない。そろそろ指導力のあるところを見せつける必要がある」と指摘している。人種問題が今回の抗議デモの拡大で争点になるのは必至で、両者の大きな対立軸となるだろう。
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