コロナ禍支援に温暖化対策を織り込むのは正しいか
米国政府は、航空業界に対し従業員への給与支払いの援助などに250億ドルの支援策を決めている。多くの国が航空業界への支援策を導入しているが、IATAの集計では5月中旬の時点で、世界合計1230億ドルの支援が決まっている。内訳は政府による融資500億ドル、政府保証付き融資120億ドル、税支払い猶予50億ドル、従業員の給与補助350億ドル、資本注入110億ドルなどになっている。
スイスなど、一部の政府は融資返済前の配当制限を融資の条件にしているが、フランス政府は、エールフランスに対する70億ユーロの融資の条件として、2030年までに旅客キロ当たりの二酸化炭素排出量を2005年比50%減、鉄道で2時間半以内で到達可能な地点へのフライトを大幅に削減することなどの条件を付けた。
オーストリア政府は、オーストリア航空に対する融資の条件として、2030年までに2018年比排出量を50%削減することを条件とし、さらに燃料効率改善、代替燃料の利用促進、航空機買い替えなどを要求した。1航空券当たり12ユーロの課税を開始することと、特に350キロ以下のフライトには30ユーロの課税を行うことも発表した。
エールフランスの地上職員は2.9万人、フライトアテンダント1.2万人、パイロット4000人だ。コロナ禍が航空会社の雇用にも大きな影響を与える中で、温暖化対策に費用を使うことを要求することは正しいのだろうか。温暖化がどのような影響を与えるか、まだ分っていないことも多い。
基幹インフラを維持することは、国民生活にも企業活動にも重要なことだが、限られた資金を効果が明確でない対策に使用することは正しいのだろうか。温暖化問題に取り組んでいるスウェーデン、ドイツ政府などが、温暖化問題への取り組みを支援の条件にしていないのは、何が優先されるかを考えた結果ではないだろうか。
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