4月末に、欧米の大手石油・ガス企業3社が今年第1四半期の決算を発表した。新型コロナの影響を大きく受けた原油価格低迷により売上は減少し、収益はマイナスに転じた。欧米企業売上第1位のロイヤル・ダッチ・シェルは、第2次世界大戦後初めて減配に追い込まれた。配当額を維持した欧米企業第2位BPも将来の減配の可能性を示唆することになった。37年間増配を続けていたエクソン・モービルは第1四半期の配当を前年82米セントから87セントに増配、第2四半期は前年同額87セントを維持することを発表したが、今後は不透明だ。
大手石油会社は、軒並み今年予定されていた資本支出、投資額削減を発表したが、再生可能エネルギーに力を入れるシェルとBPは再エネ投資を原則維持する意向だ。価格が大きく乱高下することによりリスクの高くなった原油への投資を避け、リスクが低く相対的に有利になった再エネへの投資を維持するのは、企業戦略に合致する以上、投資理論から考えればエネルギー企業としては当然の選択だろう。BP、エクソン・モービルの最大の投資額削減対象は、採算が悪化した米国のシェールだった。
今後の原油需要について、第1四半期の決算発表時、シェルのベン・ファン・ブールデンCEOは今後10年間で天井を打つ可能性が高まったと発言し、BP・バーナード・ルーニーCEOは、新型コロナ禍前の需要に戻らない可能性もあると示唆している。原油需要が低迷するなかで、巨大石油企業が再エネに事業内容を変えていけば、やがて雇用を失う可能性がある。なぜだろうか。
低迷する巨大石油会社の採算
2019年の売上高基準では、世界最大の石油会社は中国石油化工(SINOPEC)、2位も中国石油天然気(PETROCHINA)だ。3位にシェル、4位にサウジアラビア・アラムコ、5位BP、6位エクソン・モービルと続く。1位SINOPECの売り上げは約46兆円、6位のエクソン・モービルの売上でも約28兆円、純利益は1.5兆円の巨大企業ばかりだ。
図-1が各社の売上高と純利益額を示している。純利益額が最も少ないBPでも4000億円以上あったが、その決算内容は、今年の第1四半期には様変わりした。
表‐1が欧米3社の今年第1四半期の売上高、純利益額を示している。前年同期比では売り上げは、1割から3割減。純利益は軒並みマイナスになった。この理由は、新型コロナにより、原油需要が低迷し価格も下落したからだ。たとえば、9割以上の国民が家に留まることを要求された米国では、ガソリンと航空用ジェット燃料を中心に石油製品の需要は大きく落ち込んだ。図-2が示すように、ガソリンの供給量は通常時から4割以上、ジェット燃料は8割近く落ち込んだ。ガソリン需要は4月下旬から多少回復傾向だが、ジェット燃料は落ち込んだままだ。
石油の需要はいままで右肩上がりだった。コロナ禍前石油輸出国機構(OPEC)は途上国における輸送用燃料を中心に2040年まで需要は堅調に伸びると予想していた。図-3が今までの石油需要量の実績とOPECによる2040年までの需要予測を示している。
しかし、コロナ禍が需要環境を変えた。BPルーニーCEOは、「BP内の移動は制限され、多くの従業員は在宅勤務をしている。社会の変化は、すべてではないにせよ、根付く可能性があり消費が落ちるのではとの疑問がでてくる。実際に起こる可能性がある」と述べ、石油消費がコロナ禍前には戻らない可能性があると示唆した。
シェルのファン・ブールデンCEOは、「石油・天然ガス需要は、第1四半期に最大30%も落ち込んだ。需要が元に戻るのか。答えるのが難しい。我々は不確実の危機の時代に生きている。まず石油需要、その後天然ガス需要がピークを打つとみていたが、20年代に石油の需要がピークを打つ可能性が高まったのではないか」と述べている。
原油需要はどうなるのだろうか。