2024年12月22日(日)

World Energy Watch

2020年4月7日

 欧州、米国の多くの州で自宅に留まることが要請され始めると、日本でも一時あったように、トイレットペーパー、缶詰、パスタなどに消費者が殺到する現象が見られた。ただ、日本でも欧州でも見られず、米国だけで見られたのは、銃砲店に行列ができたことだ。

銃を購入する女性。ペンシルベニア州ニューカッスル(AP/AFLO)

 多くの人が社会不安を感じ、たとえば食料、生活必需品目当てに自宅が襲われる時に備える必要を感じたためできた行列だ。米国では、コロナウイルス対策のため国家にとり必要不可欠な16の産業が定められたが、当初銃砲店はその中には含まれておらず、外出禁止時に閉鎖される店舗になると思われたため、閉鎖前に購入を急いだ人もいた。

 連邦政府国土安全保障省下に2018年設立されたサイバー・社会基盤安全保障庁(CISA)は、コロナウイルス対策として国家にとり必要不可欠な16産業を定めている。操業が損なわれると国にとり問題が生じる産業だ。該当業種で働く人たちも同様に必要不可欠とされているが、CISAは強制力を持たず、各州、あるいは地方政府が外出を禁止する際に対象外にする職種選択の参考とされる指針になる。選択は州政府、自治体に任される。

 今回多くの州でコロナウイルス対策として食料、薬品など必要不可欠な物資購入以外の外出が禁止され、自宅に留まるように要請されたが、各州政府、あるいは自治体は例外として外出可能な職種を定めている。たとえば、医療従事者、発電所、交通機関、運輸業、金融業、食品業などの従業員だ。スーパーマーケットが開いていても店員がいなければ意味がないから当然のことだ。多くの州はこの指針を参考に必要不可欠な産業を選択した筈だが、州政府により判断はかなり異なっている。

 3月28日CISAは、必要不可欠な16産業の見直しを発表したが、その中で物議を醸したのは、銃、弾丸製造、輸入、販売業が必要不可欠な産業に追加されたことだ。全米ライフル協会などからは追加を歓迎するとの声があったが、銃規制を要求する団体からは必要なのかとの疑問が出された。さらに、石炭生産、輸送業も追加され、石炭火力発電所が減少を続ける中で銃と同様に議論を呼ぶことになった。銃関連も石炭関連産業もトランプ大統領の強力な支援業界であることから、大統領の再選戦略の一環のようにも思える。

銃と弾丸を求める行列

 コロナウイルスによる感染が米国で話題になり始めた2月下旬から銃砲店に行列ができ始めた。弾丸の在庫が急減しトイレットペーパー販売のように購入数に制限を課す店もでた。さらに、ネット販売でも弾丸の販売量が急増した。弾丸のネット販売ショップAmmo.Comによると、2月23日から3月26日までのサイト訪問者は直前の同期間比350%増、売り上げは777%増に達したとのことだ。全国紙“USA Today”はフロリダ州、ノースカロライナ州、ジョージア州などからの注文が増えていると伝えている。

 4月2日時点で米国の38州とワシントンDCが、ニュアンスの違いはあるものの、原則として必需品の買い物以外の外出を控え家に留まることを求めている。さらに、7州では一部地域が同様の封鎖を行っており、いま自宅に留まることを要求されていない州はアイオワ州、ネブラスカ州など5州だけだ。全人口の約9割、2億9700万人が対象になっている。各州、地方政府は生活に必要不可欠な食品、薬品などを除く商店、レストラン、娯楽施設などの閉鎖を求めている。

 連邦政府CISAは、コロナウイルス感染拡大を受け3月19日、経済、公衆衛生、公共の安全、国の安全保障上必須とされる16の産業を定め、具体的な職種を定めた指針を発表した。医療、エネルギー、国防、公務、通信、金融、食品などの産業だが、各州政府、地方自治体は、この指針も参考に生活に必要不可欠とされ、出勤すべき職種を定めた。一部を除き多くの州、地方自治体では銃砲店は閉鎖すべきとされた。

 米国憲法修正第2条では、「国民が武器を保有、また携帯する権利を侵してはならない」とあり、テキサス州は、これに基づき銃砲店を必要不可欠であり閉鎖対象ではないと定め、ペンシルバニア州は、社会的距離を取ることを条件に営業を認めた。しかし、多くの州、地域では銃砲店は閉鎖を要求されている。


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