2024年4月16日(火)

World Energy Watch

2020年5月19日

再エネ事業で雇用を守れるか

 いまドイツでは太陽光発電に係わる雇用の問題が浮上している。ドイツの再エネ法では太陽光発電設備が5200万kWに達したところで、補助は打ち切りになる。この上限値の撤廃を再エネ業界は要求し昨年11月政府は撤廃を決めたものの、まだ実施されていない。今年前半に導入量が上限値に達するとみられることから、仮に、撤廃が間に合わなければ、雇用が失われると再エネ業界が騒ぎ始めた。上限に達したところで新規太陽光発電設備導入が激減し、雇用が失われるからだ。太陽光関連の雇用の大半はパネル販売と設置工事だ。新規導入がなくなれば、当然仕事はなくなる。

 米国の太陽光設備導入量と雇用の推移を図‐6が示している。導入量と雇用には相関関係があるが、その理由はドイツと同じく新規導入に伴う雇用が主体だからだ。米国の太陽光関連事業の雇用をみれば、25万人のうち、約3分の2、16.3万人が設置工事の会社で働いている。3万人がパネル卸・販売、3.4万人が製造、1.2万人が発電事業の操業と保守に携わっている。要は、設備の新設に係わる雇用が8割近くを占めているので、新設がなくなれば雇用は失われる。

 1企業で、7万から8万人の大きな雇用を持つ石油会社が再エネ事業にシフトした時に雇用を守ることはできるのだろうか。初期投資額は大きいが、操業には人手を必要としない太陽光、風力事業へのシフトは雇用に影響を与える。企業の責任の中には環境問題もあるが、従業員の雇用を維持することも、途上国に競争力のあるエネルギーを供給することも企業の重要な役割だ。

 世界では国連の定義で貧困と呼ばれる人が13億人いる。この人たちが価格の高いエネルギーを使うことは難しいだろう。温暖化問題を目標に定めるエネルギー企業は、顧客と従業員を含む自社の利害関係者と貧困・エネルギーの問題をどのように考えているのだろうか。30年は長いようで、企業にとっては短い時間だ。

  
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