石油需要は右肩上がりか?
国際エネルギー機関(IEA)は、世界の石油需要は今年4月前年同期の約3割、2900万バレル/日、落ち込んだとし、需要は今年12月になっても前年同期のレベルには戻らず、前年比270万バレル/日減と予測している。今年を通しての需要予測は前年比930万バレル/日減だ。米エネルギー省の機関は、2021年12月まで毎月の世界の石油需要を予測している。図-4の通り、来年12月になっても2019年12月の需要を下回ったままだ。
新型コロナが作り出した新しい生活パターンは石油の需要を大きく変えることになるのだろうか。石油需要の中心は、自動車を中心にした輸送部門だ。この部門での消費が今後の石油需要を大きく左右することになるとみていいだろう。石油需要量の約45%が自動車、7%が航空機、4%が海運部門だ。
輸送部門において石油需要に影響を与える出来事は、内燃機関自動車の燃費の改善、電気自動車、燃料電池車などガソリン、軽油以外の動力源で動く車、あるいは列車の導入。バイオエタノール、バイオディーゼルなど植物由来燃料の導入、カーシェアなど新しい車利用の方法。さらに、今回の新型コロナの問題により世界中で広まった在宅勤務の定着も原油の需要に大きな影響を与えることになるだろう。家庭での電力需要量は在宅勤務により増えた地区もあるが、オフィス、工場の電力需要の落ち込みはそれよりも大きく、エネルギー需要量はマイナスになっている。
米ブルッキングス研究所の研究員は、コロナ禍後の経済の道筋をいくつか示している(『The ABCs of the post-COVID economic recovery』)。もっとも楽観的なケースではV回復を超えるZ回復、悲観的なケースではL字型推移を想定しているが(図-5)、石油の需要については、楽観的なケースは、まず期待できないのではないか。
リモートワークは今後の働き方の一つの選択肢になりそうだ。通勤しない人が増えれば、石油消費も減少する。欧州主要国政府の景気回復支援策には電気自動車普及への支援策が盛り込まれる可能性も高いだろう。
石油会社にとっては厳しい時代になる可能性があるが、脱石油と温暖化問題への取り組みを進めている欧州系石油会社は、その動きを加速させることになる。