2024年4月19日(金)

補講 北朝鮮入門

2020年6月17日

(2)党統一戦線部代弁人談話「敵はやはり敵だという結論を下すようになる」(6月5日)

 「敵はやはり敵だという結論を下すようになる」と題する党中央委員会統一戦線部代弁人(報道官)談話が5日に発表され、『労働新聞』6月6日付にも掲載された。「対南事業を総括する第1副部長が警告した談話というものを慎重に肝に銘じて内容の一字一句をよく見てものを言うべき」だという表現で、金与正氏が南北関係を主管していることを明らかにした。ただ金与正氏の具体的な職責は依然として分からない表現である。

 「金与正第1副部長は5日、対南事業部門で談話文に指摘した内容を実務的に執行するための検討に着手することに関する指示を与えた」としたが、金正恩委員長以外の人物が「指示」を与えたことを明記することは異例中の異例だ。

 談話は「わが方は、南側からのあらゆる挑発を根源的に除去し、南側との一切の接触空間を完全に隔絶してなくすための決定的な諸措置について久しい前から考えていたということを隠さない」と表明。さらに、「最初の順番として、やる事もなく開城工業地区に居座っている北南共同連絡事務所から断じて撤廃するであろうし、引き続きすでに示唆したいろいろな措置も伴わせるつもり」だと、今回の爆破を抽象的な表現ながら再び予告していた。

 また「南側が非常に疲れるようなことを準備」しているとも言及した。今回の爆破を含むのだろうが、「現在の事態を直視しながら、対決の悪循環の中で行ける所まで行ってみようというのが、われわれの決心である」とも述べている。

(3)朝鮮中央通信社報道「北南間の全ての通信連絡線を完全遮断してしまう措置をとることについて」(6月9日)

 南北間の通信連絡線遮断を発表した朝鮮中央通信社報道は、『労働新聞』6月9日付などに掲載された。一連の報道が『労働新聞』に出ているというのは、南北関係の悪化を北朝鮮国民にも一貫して周知していることを意味する。

 この報道では、「対南事業部署の活動総括会議で8日、朝鮮労働党中央委員会副委員長である金英哲同志と朝鮮労働党中央委員会第1副部長である金与正同志は、対南事業を徹底的に対敵活動に転換すべきであるという点を強調し、背信者と人間のクズが働いた罪の代価を正確に計算するための段階別な対敵活動計画を審議し、まず先に北南間の全ての通信連絡線を完全に遮断することに関する指示を与えた」とされた。「指示」を下した人物として、金与正氏に加えて新たに金英哲副委員長を出し、しかも金英哲氏の名を先に報じている。金与正氏が「指示」を下したという6月5日付の統一戦線部代弁人談話と比べると、金与正氏が一歩退いた形となっている。現時点では、金与正氏の台頭を過度に評価してはいけない。

(4)党中央委員会統一戦線部長チャン・グムチョル談話「北南関係は既に収拾できない状況に至った」(6月12日)

 青瓦台(韓国大統領府)が「対北ビラ散布行為を明白に現行法に抵触する行為と規定し、法を違反する場合、厳正に対応し、南北間の全ての合意を順守していくという立場を公式発表した」ことに対する談話が発表され、『労働新聞』6月13日付に掲載された。

 「大きなことをやり遂げるかのようによくほらを吹くが、実践は一歩も踏み出せない相手と本当にこれ以上、向かい合いたくない」などと文在寅政権を非難したが、新味はないものだ。第1副部長の金与正氏のほうが重要であることは言うまでもない。

(5)爆破を予告した金与正第1副部長談話(6月13日)

 今回の爆破を直接的な表現で予告したのは6月13日の金与正談話であった。この談話も『労働新聞』6月14日付に掲載されている。

 「2年間しなかったことを直ちにやり遂げる能力と度胸がある連中なら、北南関係がいまだにこの状態であろうか。いつ見ても、遅れて騒ぐ彼らのいつもの言葉に耳を傾けたり、形式に過ぎない決まり切った言動を決して信じてはならず、裏切り者とくずの連中の罪科を絶対に容認してはならない」と断罪し、「報復計画」は「国論として確固と固まった」とした。6月4日の金与正談話以降、国内でその談話を支持する集会が開かれたことで、脱北者と韓国当局を糾弾する「国論」ができたという主張だ。

 談話は「今や連続的な行動で報復しなければならない。」「南朝鮮の連中と決別する時になったようだ。われわれは近く、次の段階の行動を取るであろう」と述べる。従前以上に強いトーンとなり、「私は、(金正恩)委員長同志と党と国家から付与された私の権限を行使して対敵事業関連部署に次の段階の行動を決行することを指示した。遠からず、無用な北南共同連絡事務所が跡形もなく崩れる悲惨な光景を見ることになるであろう」と宣言した。

 さらに、「南朝鮮当局が気がかりでならないはずの次のわれわれの計画についてもこの機会に暗示するなら、次の対敵行動の行使権はわが軍隊の総参謀部に手渡そうとする」「わが軍隊も、人民の憤怒を多かれ少なかれ静められる何かを決心して断行すると信じている」としており、軍による後続措置を示唆した。


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