2024年12月22日(日)

Wedge REPORT

2020年7月11日

(Abscent84/gettyimages)

 コロナ過によって賃料を支払うことができず、お店の閉店を余儀なくされた。そんな報道が見られるようになったが、事情は個人も同じ。勤め先の業績悪化で所得が減った、あるいは先行きが心配といった人も少なくないだろう。

 そんな中、6月の1カ月間限定で、初回家賃の半額を支援する(最大5万円)というサービスを打ち出したウチコミ!(東京都新宿区)。社長の大友健右さんは、「当初予定していた入居時期を変更せざるを得なかった、もしくは契約した部屋をキャンセルしたというケースを数多く聞きます。さらには収入が減少し、現在の住まいから引っ越しの検討をせざるを得ないという方もいると思います。戦後最大の危機といわれるこの困難な局面を乗り越えるために何かできることはないか考えました」と話す。

不動産業界の〝常識破り〟

 2012年に創業したウチコミ!は、不動産業界の〝常識破り〟とも言えるサービスを開始した。家と入居希望者が直接コンタクトできる賃貸住宅のフリーマーケットをつくったのだ。

 入居希望者と大家が直接交渉するので、敷金・礼金は交渉次第、そして入居希望者にとって仲介手数料は不要となっている。

 大友さん自身が30代後半まで不動産の業界に携わっていた。大家から客付けのために高額の手数料を取り、それがなければ成立しないという業界の仕組みに疑問を持ち、このようなサービスを思い立った。

 創業当時は、これまでにないサービスだったため、業界の理解も進まず苦しんだが、現在は登録大家会員も1万人を超え、全国各地に支社も設立している。サービスの利用に会員登録は必要だが、物件を掲載する際の費用は発生しない。費用が発生するのは、内見や賃貸契約をサポートする不動産会社に対して大家が支払う手数料だけだ。

 では、ウチコミ!にはどうやって収入が入るのか? 内見賃貸契約をサポートする不動産会社からの利用料と、登録大家会員専用のマイページや会員紙に掲載される広告が収入になる。

 「ウチコミ!の立場は、借り手さんと大家さんの出会いの場の提供者です。不動産流通は、デジタル化によって、ネットで検索できるなどアクセスが容易になりました。ただ、そのために情報が画一化するという弊害も生まれました。例えば、駅から徒歩何分、方角など……。でも、それは入居希望者が本来求めているでしょうか? 駅から家までの時間は、その間通る道にどんなものがあるかで体感時間が変わりますし、方角についても、生活している時間の日当たりがどうか? ということのほうが重要で、人の感情はアナログなのです」

 入居希望者と大家のコミュニケーションも大事だ。

 「例えば、『ペット2匹まで』という条件があったとします。でも、本当に3匹いるとダメなのでしょうか? 大家さんは家を汚されるリスクを考えているだけです。双方で直に話すことで、『今住んでいる家の写真を送ってください』ということになり、綺麗に使っている様子だと、何の問題もないはずです」

 大友さんの話を聞くと、これまでこのようなサービスがなかったことのほうが不思議に感じてしまう。

 「これまで2種類のプレーヤーが参入を試みました。一つは不動産会社ですが、自社集客サイトになってしまいました。もう一つはネット系でしたが、こちらはマネタイズ先行型になってしまいました」

 不動産仲介業者に任せてしまうと、オーナー自身が工夫することもできない。できるとすれば仲介業者へのインセンティブを増やすことくらいだという。入居者が増えるように物件を管理し、情報を包み隠さず公開する。そして、痒いところに手が届く大家は必然的に人気になる。

 「感覚的な寄り添い方ができる方は人気ですね、『大家さんがいい人だから』と、借りる人も少なくありません。大家さんはいわば経営者であり、サービス提供者です。アパートを建ててあとは丸投げという時代は終わったのです」


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